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温暖化を増幅させる2つのフィードバック過程

異常気象と気候変動・地球温暖化(5)温暖化増幅の過程

中村尚
東京大学 先端科学技術研究センター 副所長・教授
情報・テキスト
一度温暖化が進んでしまうと、温暖化を加速・増幅させるフィードバック過程が、気候システム内で次々と起こってしまう。このような悪循環は、氷雪の溶解による温暖化の加速と温暖化による温室効果ガスのさらなる増加という、2つのメカニズムに分けられる。それぞれどのように温暖化を加速させるのだろうか。(全7話中第5話)
時間:06:30
収録日:2019/03/26
追加日:2019/05/25
≪全文≫

●温暖化のフィードバック過程1:氷雪の溶解による温暖化の加速・増幅


 では(温暖化を加速・増幅させる)「フィードバック」について、ここで説明しておきたいと思います。

 気候システムの「正のフィードバック」と呼ばれるものは、いったん温暖化が始まると、気候システム内でそれを加速・増幅させる変化が次々に起きてくる、そういったメカニズムを指しています。

 これは、特に近年の高緯度域において顕著です。例えば過去40年において、北半球の高緯度域では地表気温が1.5度も上昇しています。これは、地球全体の平均的な気温上昇の倍に当たります。それくらい速いスピードで、この地域では温暖化が進んでいます。

 温暖化が起こると当然、太陽放射への反射率が高い雪氷の面積や、それに覆われる期間が減ることによって、陸面や海面が受け取る太陽放射のエネルギーがさらに増えていきます。そうなると、これによって温暖化がさらに加速・増幅されます。これは、「ice-albedo feedback」と呼ばれ、「氷と反射率のフィードバック」という意味です。

 上の資料の下側の図は、衛星マイクロ波のセンサーで観測された、9月における北極の海氷域を表しています。図の白い部分が海氷域ですが、1970年代~90年代といった全盛期と比べますと、昨今において非常に明らかな減少を示しています。海氷は30センチも厚みがあれば、非常に効果の高い断熱材になります。ですから、寒い時期に海氷が減ることは、夏の間に海に蓄えられていた熱がどんどん大気に出てくることにつながり、その結果として気温を上昇させます。

 それからもう一つ、海氷が融ければ(海面から)水蒸気も出るわけです。水蒸気は温室効果気体ですから、これも温暖化を強める方向に働きます。さらにもう一つ大事なこととして、海氷が薄くなると、風によって動きやすくなります。海氷の流動性が高まることによって、ある特定の風向き(の風)が強くなると、北極域の氷がさらに大西洋の方に出されてしまうことになります。そうなりますと、ますます北極域の気温が高くなります。このような悪循環がすでに始まっているのです。


●温暖化のフィードバック過程2:温室効果ガスのさらなる増加


 温暖化を加速させるフィードバック過程には、もう一つ別のものがあります。それは、地球温暖化それ自体が、温室効果ガスをさらに増やすという、そういう危険性もあるわけです。これは「負のスパイラル」と(一般に)呼ばれますが、そこでは正のフィードバックが働いていることを理解していただきたいと思います。

 例えば上の資料の左側の図は、衛星マイクロ派の観測によって得られた、大気中の水蒸気量の増加を示しています。この図で青っぽくなっているところが、10年間で水蒸気量が増加している場所です。海洋の多くの海域で、水蒸気が増えていて、蒸発量も増えています。陸域に関しては残念ながら、このセンサーによる観測の精度が高くありません。しかし陸域でもやはり、平均すれば水蒸気が増える傾向にあります。

 水蒸気は、我々にはコントロールできませんが、大気中に最も多く含まれている温室効果気体です。ですから水蒸気の増加は、温室効果を強くしますし、後ほどシリーズ内で説明するように、さまざまな異常気象、特に豪雨を引き起こす要因にもなってきます。

 もう一つ、地球温暖化それ自体による温室効果ガスの増加は、メタンに関しても起こっています。これは特に、北半球の凍土が融けることによって起こります。そこにはメタンハイドレートが閉じ込められているからです。温暖化に伴って、シベリアやカナダやアラスカなどの凍土の面積も、着実に減っています。

 そして、そこに閉じ込められていたメタンが融けて、大気中に放出されています。このメタンは、温室効果つまり赤外線を吸収する効率が非常に高い物質です。したがって、メタンの増加はその量が少なくても温室効果をいっそう高めるといったリスクがあるのです。
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