異常気象と気候変動・地球温暖化2
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ジェット気流の蛇行は気候にどのような影響を与えるか
異常気象と気候変動・地球温暖化2(2)停滞性Rossby波
中村尚(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
偏西風ジェット気流の蛇行は、気候に対してどのように影響を与えるのだろうか。ジェット気流の持続的な蛇行は、「停滞性Rossby波」と呼ばれる大規模な大気の波動によって引き起こされるが、蛇行が生じるメカニズムや蛇行がもたらす具体的な気候への影響などさまざまな観点から、ジェット気流の蛇行がもたらす影響を読み解く。(全6話中第2話)
時間:10分22秒
収録日:2019年3月26日
追加日:2019年7月23日
≪全文≫

●ジェット気流は大気の波動の影響で持続的に蛇行する


 では、このジェット気流が蛇行したときにどのようになるかということを、上の図を使って説明したいと思います。先ほど申し上げましたように、これは北半球の状況ですと、中緯度においてジェット気流は西から東に素直に流れています。もちろんこれは、南側の暖気と北側の寒気の境目をジェット気流が吹いているわけです。

 ところが、大規模な波動の影響によって、上の図のようにジェット気流が蛇行することがあります。ジェット気流が蛇行したとしても、温度風平衡から決まる寒気と暖気の境目であるという性質には、変わりはありません。それはつまり、ジェット気流が蛇行することによって、対流圏の気温の分布が通常とは大きく変わってくることを意味します。

 ここで、ジェット気流の持続的な蛇行は、「停滞性Rossby波」と呼ばれる大規模な大気の波動によって引き起こされます。この規模は、通常の移動性の高気圧・低気圧の大体2倍から3倍もあるような大きなものです。これに対応して、大きな高気圧や低気圧が持続することになります。


●ジェット気流の蛇行は気候にどのような影響を与えるか


 このジェット気流が南へ蛇行して下がったところでは、普段は暖気に覆われているところに寒気が入るわけです。例えば冬ですと、異常低温や寒波、あるいは豪雪に見舞われることになります。夏になりますと、地表は暖かいのですが上空に寒気が入りますので、大気の成層状態が非常に不安定になって、積乱雲が発達しやすい状況になります。場合によっては竜巻も起こるという不安定な状況をもたらします。

 他方で、北にジェット気流が蛇行したところは、高気圧に覆われるわけです。われわれは、南に蛇行したところを「気圧の谷」、北に蛇行したところを「気圧の峰」と呼んでいます。そして、この北に蛇行した気圧の峰のことを「ブロッキング高気圧」といいます。これをなぜブロッキング高気圧と呼ぶかというと、実は、通常のジェット気流が真っすぐ西から東へ吹いていても、そこに低気圧が通り、それによって、晴れたり、あるいは雨が降ったりといったことを規則的に繰り返すわけですが、そのように移動してくる低気圧をブロックしてしまうからです。つまり、素直に西から東にその低気圧が通っていくのを妨げてしまうと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ