●ジェット気流は大気の波動の影響で持続的に蛇行する
では、このジェット気流が蛇行したときにどのようになるかということを、上の図を使って説明したいと思います。先ほど申し上げましたように、これは北半球の状況ですと、中緯度においてジェット気流は西から東に素直に流れています。もちろんこれは、南側の暖気と北側の寒気の境目をジェット気流が吹いているわけです。
ところが、大規模な波動の影響によって、上の図のようにジェット気流が蛇行することがあります。ジェット気流が蛇行したとしても、温度風平衡から決まる寒気と暖気の境目であるという性質には、変わりはありません。それはつまり、ジェット気流が蛇行することによって、対流圏の気温の分布が通常とは大きく変わってくることを意味します。
ここで、ジェット気流の持続的な蛇行は、「停滞性Rossby波」と呼ばれる大規模な大気の波動によって引き起こされます。この規模は、通常の移動性の高気圧・低気圧の大体2倍から3倍もあるような大きなものです。これに対応して、大きな高気圧や低気圧が持続することになります。
●ジェット気流の蛇行は気候にどのような影響を与えるか
このジェット気流が南へ蛇行して下がったところでは、普段は暖気に覆われているところに寒気が入るわけです。例えば冬ですと、異常低温や寒波、あるいは豪雪に見舞われることになります。夏になりますと、地表は暖かいのですが上空に寒気が入りますので、大気の成層状態が非常に不安定になって、積乱雲が発達しやすい状況になります。場合によっては竜巻も起こるという不安定な状況をもたらします。
他方で、北にジェット気流が蛇行したところは、高気圧に覆われるわけです。われわれは、南に蛇行したところを「気圧の谷」、北に蛇行したところを「気圧の峰」と呼んでいます。そして、この北に蛇行した気圧の峰のことを「ブロッキング高気圧」といいます。これをなぜブロッキング高気圧と呼ぶかというと、実は、通常のジェット気流が真っすぐ西から東へ吹いていても、そこに低気圧が通り、それによって、晴れたり、あるいは雨が降ったりといったことを規則的に繰り返すわけですが、そのように移動してくる低気圧をブロックしてしまうからです。つまり、素直に西から東にその低気圧が通っていくのを妨げてしまうと...