異常気象と気候変動・地球温暖化2
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
ジェット気流の蛇行は気候にどのような影響を与えるか
第2話へ進む
異常気象はほぼ偏西風ジェット気流の蛇行が原因で発生する
異常気象と気候変動・地球温暖化2(1)ジェット気流
科学と技術
中村尚(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
極端な異常気象をもたらす大きな原因は、短期的な自然変動である。そのため、異常気象を理解するためには、自然変動自体を理解する必要がある。このうち、われわれの住む日本における異常気象のほとんどは、偏西風のジェット気流が蛇行することによって、引き起こされている。それは、どのようなメカニズムなのだろうか。(全6話中第1話)
時間:8分22秒
収録日:2019年3月26日
追加日:2019年7月23日
≪全文≫

●異常気象を理解するためには自然変動を理解する必要がある


 前回のシリーズで申し上げましたように、異常気象ないし極端現象をもたらす要因には、短期の極端な自然変動があるわけです。この異常気象、例えば豪雨、あるいは熱波、干ばつ、寒波などは、最近でなくても温暖化が顕在化する以前から起きていたものです。ということで、全ての異常気象が温暖化だけが原因で起きているものではありません。温暖化は、こういった短期気候変動・自然変動が起こったときに、それに伴う異常気象の発生を促したり、あるいはその深刻さを増大させたりといった働きをしているわけです。

 そこで、異常気象を理解し、またその予測の可能性を高めるためには、この自然変動自体の理解も必ず行わなければなりません。


●異常気象はほぼ偏西風ジェット気流の蛇行に伴って発生する


 われわれが住む日本がある亜熱帯から、中緯度さらには高緯度域にかけて、このあたりで起こる異常気象のほとんどは、その上空を吹く偏西風のジェット気流が蛇行することに伴って発生します。この偏西風には、実は2種類のものがあります。北半球と南半球のそれぞれですが、緯度にして大体30度から40度のところに、非常に強いジェット気流があります。上の図で示している亜熱帯ジェット気流ですが、これは熱帯の非常に暖かい空気と、それから温帯の少し涼しい空気の境目を吹いています。この強い西風は、熱帯の積乱雲の活動やモンスーンの働きで維持されています。

 これに対して、亜寒帯のジェット気流は、温帯の空気とそれよりもはるかに冷たい寒帯の空気の境目を吹いています。そしてこのジェット気流に伴って、移動性の高気圧・低気圧が非常に頻繁に発達しやすくなっています。実は、この高気圧・低気圧が集団として亜寒帯ジェット気流を維持している、といった面白い性質があります。

 ではなぜ、このジェット気流が熱帯・温帯・寒帯といった気温の境目を吹くのか。それについて簡単に説明したいと思います。

 資料内の下段の図を見てください。これは、北半球のジェット気流、西風のジェット気流、それを南北に切って、東から西の方、つまり上流側を見た図だと思ってください。南側の空気は気温が高いため、空気が膨張しています。これは、図の左...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
2050年「プラチナ社会」実現への挑戦(1)「プラチナ社会」実現のルーツと現況
2025年頭所感~5つのプラチナ産業イニシアティブ創りへ
小宮山宏
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉