異常気象と気候変動・地球温暖化2
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アンサンブル予報を1週間以上先の確率予報に利用する
異常気象と気候変動・地球温暖化2(4)アンサンブル予報
中村尚(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)
天気の数値予報には、数値大気モデルに伴う不確実性や複雑性に由来する、長期の予報を行えないという限界がある。そこで長期の天気予報に用いられるのが、確率論的な予報である。これは、「アンサンブル」と呼ばれるように、異なる誤差やモデルを利用して複数の予報を行い、それらを併用する天気予報である。(全6話中第4話)
時間:8分29秒
収録日:2019年3月26日
追加日:2019年7月23日
≪全文≫

●日々の数値天気予報には限界がある


 決定論的な数値予報には、おのずと限界があります。日々の決定論的な天気予報の限界は、理論的には2週間といわれていますが、大体1週間から10日で限界になります。数値大気モデルの中では大気のいろいろなプロセスが表現されています。ですが、現在までに大きく発達したといっても、数値大気モデルによる表現、あるいは観測データをなじませるデータの同化には、若干の不完全性が残ってしまいます。

 さらにそうした不確実性に加えて、大気の循環自体が実は非線型性を有しているという問題もあります。つまり、数値天気予報においては、予報される変数が積の形すなわち掛け算の形で出てきます。これはカオス的なものになりがちであることが数学的に分かっています。そこでは、非線型性が原因となって、初期に生じたほんのわずかな観測値の誤差が急速に拡大してしまいます。そして、いずれは限界に達してしまい、予報の価値がなくなるところまで増幅してしまうわけです。


●確率的な天気予報


 しかし、数値予報に限界があるとしても、われわれはここで諦めているわけではありません。決定論的な予測を行うのはここまでにして、後は確率論的な予測を行っています。それが確率予報です。例えば、上の図に示したような落ち葉のことを考えてください。秋になると落ち葉が落下してきますが、正確にどの位置に落ちるか、これを予測するのは困難です。

 それがなぜかといえば、非常に小さな大気の乱れがあるからです。しかしながら、われわれには、風がなければほぼ木の真下に落ち葉は落下するだろう、そう容易に想像することができるわけです。さらに風が吹いてきたとしても、この風がある程度一定であれば風下側に落ち葉が流れて落下するだろうし、この風全体が不安定であれば広い範囲に散らばってしまうだろう、といった予測もできます。つまりこれは、もし風が持続的であれば、その影響を確率論的に予測できることを意味します。例えば、風上側に落ち葉はほとんど来ないだろうと、われわれにはいえるわけです。


●アンサンブル予報によって、不確実性を逆手に取る


 ですから、1週間以上先の確率予報では、こういった予測を利用するわけです。われわれはこれを「アンサンブル...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高