●天気予報はどのような原理で行われているか
こうした短期的な偏西風の蛇行に関しては、日々の移動性高気圧・低気圧の振る舞いを天気予報で見ながら、その対策を考えています。そこでここでは、数値予報の原理について簡単にご説明をしておきたいと思います。
天気予報ではまず、今の大気の状態がどうなっているかをきちんと把握しなければなりません。これはもう全て、グローバルなものです。先ほど説明しましたように、偏西風の持続的な蛇行による影響は非常に速く伝わりますので、日本の周辺だけを観測していても正確な予報ができません。
これについてかつては、地上の測候所で地上観測をしていました。「ラジオゾンデ」という風船に測器をぶら下げて、飛ばしていました。あるいは、観測船やブイで洋上観測するということがほとんどでした。しかし、ここ20年ないし30年で、気象衛星による観測が非常に充実してきました。それによって、従来の観測では手薄だった熱帯域や、あるいは南半球、それらにおける大気の状態の把握が飛躍的に改善しました。このように、予報精度もどんどんと向上してきているわけです。
●現在の数値天気予報の仕組み
現在の天気予報は、どのような予報なのでしょうか。それは、「数値天気予報」と呼ばれるものです。これはまず、地球の大気を碁盤の目のように切り分け、高さ方向にも切り分けていきます。その上で、大気の場を表す基本法則に従って、規則正しくデータを配置していきます。われわれはこれを「差分化」と呼んでいます。切り分けた格子点の隣同士の差のような形で表す、あるいは、時間積分は時間差として差分を取るということです。
このようなやり方で、スーパーコンピューターの上に疑似地球・疑似大気をつくるといったことをやっています。この数値天気予報は実は、第2次世界大戦直後にフォン・ノイマンが発明した電子計算機の、最初の応用の1つでした。この時代から続いて、コンピューター・サイエンスの発展とともに、この気象学も発展してきたといえます。
ここで重要なポイントは、観測について、時間をそろえることはできても、例えば、測候所の場所はまばらなので、観測データを規則正しい格子点の上へと再配備する必要があるということです。この作業を「データ同化」といいます。これをきちんと行わ...