10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

天気予報はどのような原理で行われているか

異常気象と気候変動・地球温暖化2(3)数値予報の原理

中村尚
東京大学 先端科学技術研究センター 副所長・教授
情報・テキスト
短期の天気予報に関して現在、用いられている数値予報という手法がある。この手法では、観測データを基にコンピューター上に大気を再現するため、現状の情報と物理法則にのっとった非常に正確な予報が可能になる。そのためこの数値予報は、決定論的な予報とも呼ばれている。(全6話中第3話)
時間:07:04
収録日:2019/03/26
追加日:2019/07/23
≪全文≫

●天気予報はどのような原理で行われているか


 こうした短期的な偏西風の蛇行に関しては、日々の移動性高気圧・低気圧の振る舞いを天気予報で見ながら、その対策を考えています。そこでここでは、数値予報の原理について簡単にご説明をしておきたいと思います。

 天気予報ではまず、今の大気の状態がどうなっているかをきちんと把握しなければなりません。これはもう全て、グローバルなものです。先ほど説明しましたように、偏西風の持続的な蛇行による影響は非常に速く伝わりますので、日本の周辺だけを観測していても正確な予報ができません。

 これについてかつては、地上の測候所で地上観測をしていました。「ラジオゾンデ」という風船に測器をぶら下げて、飛ばしていました。あるいは、観測船やブイで洋上観測するということがほとんどでした。しかし、ここ20年ないし30年で、気象衛星による観測が非常に充実してきました。それによって、従来の観測では手薄だった熱帯域や、あるいは南半球、それらにおける大気の状態の把握が飛躍的に改善しました。このように、予報精度もどんどんと向上してきているわけです。


●現在の数値天気予報の仕組み


 現在の天気予報は、どのような予報なのでしょうか。それは、「数値天気予報」と呼ばれるものです。これはまず、地球の大気を碁盤の目のように切り分け、高さ方向にも切り分けていきます。その上で、大気の場を表す基本法則に従って、規則正しくデータを配置していきます。われわれはこれを「差分化」と呼んでいます。切り分けた格子点の隣同士の差のような形で表す、あるいは、時間積分は時間差として差分を取るということです。

 このようなやり方で、スーパーコンピューターの上に疑似地球・疑似大気をつくるといったことをやっています。この数値天気予報は実は、第2次世界大戦直後にフォン・ノイマンが発明した電子計算機の、最初の応用の1つでした。この時代から続いて、コンピューター・サイエンスの発展とともに、この気象学も発展してきたといえます。

 ここで重要なポイントは、観測について、時間をそろえることはできても、例えば、測候所の場所はまばらなので、観測データを規則正しい格子点の上へと再配備する必要があるということです。この作業を「データ同化」といいます。これをきちんと行わないと、誤差がすぐに増幅してしまって、予報の価値を大きく下げてしまうことになります。

 現在の予報精度について触れると、短期予報の精度は非常に高いものになっています。これが実際には何を行っているかというと、例えば全球の予報ですと、6時間前からの予報値をもとに観測データで修正を加えていきます。それによって、現在の大気場について最ももっともらしい推定値を得ることができます。そしてそれを、数値予報の初期場として使うことになります。また、それは同時に、大気の歴史を記録するものですので、われわれの研究データにもなります。


●日々の天気予報は決定論的な予報である


 このような日々の天気予報は、「決定論的な予報」と呼ばれています。これは、初期の状態、つまり現状を知っていて、将来の状態を物理法則にのっとって予測していくわけです。

 現在の全球予報ですが、まず地球全体を20キロメートルの水平の格子で切っています。これを1日4回、最長11日間かけて、予想の天気図を出します。それが資料の右上の図です。それとともに、局地的な予報のために、「メソ予報」というものを同時にやっています。これは、全球予報をもとに、日本周辺域に限定した非常に細かい水平解像度でもって、しかも時間間隔も短くして、細かい場での天気を予測します。これによって、雲や降水の表現も良くなりますし、それらは地形に非常に敏感ですので、地形の表現も大幅に改善されます。

 また、最近では「局地予報」といって、さらに格子間隔を2キロメートルに限定して、1日24回、これは9時間の予報をしています。メソの場合は8回、3時間ごとに予報をしていきます。それによって例えば、低気圧によって雨が降っていても、こういった局地予報によって3時間後に雨(冷気)が抜けてくるという、そういった予測できるようになっています。これは、日々のわれわれの生活でも非常に役立つものです。
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。