●2018年夏には連鎖的な異常気象が起こっていた
これからは、今までの講義の内容を踏まえて、2018年の夏に連鎖的に起きた異常気象について、もう一度考え直してみたいと思います。
2018年夏の異常気象についておさらいをしますと、7月上旬に西日本豪雨があり、それが終わった直後から8月いっぱいまで、記録的な猛暑が続きました。例えば、熊谷で史上最高の41.1度を記録するなど、記録的な猛暑になったわけです。さらには、7月下旬以降に、台風の特異な振る舞いと、それに伴う顕著な災害がありました。
これに関しては、結構見逃されていることがあります。実は6月29日に、関東甲信地方は、史上最も早く梅雨が明けています。その直後に、実は梅雨がないはずの北海道において、梅雨前線による記録的な豪雨が起こっています。さらにその前になりますが、3月以降、北半球中緯度全般において記録的な高温とが観測されています。これらに対して、地球温暖化がどのように影響したのか。これが1つのポイントになります。
●2018年夏の天候を概括する
2018年夏の天候について、その総括を気象庁の資料をもとに行ってみたいと思います。まず資料の一番上の図は、6月から8月の平均気温に関して平年からのずれを表しています。赤で示していますように、東日本を中心に西日本まで、非常に気温が高かったわけです。猛暑であったということが分かります。しかし実のところ、北海道はやや低温傾向です。これがあったために、全国を平均すると、2010年ほどの高温にはなりませんでした。ですが、東日本・西日本の人々にとっては記録的な猛暑であったことは間違いありません。
資料の真ん中の図は降水量、下の図は日照時間を表しています。ここで興味深いこととして、北日本において降水量が非常に多かった、つまり多雨で、それから日照も少なかったということです。これは、前線の影響で曇りや雨の日が多かったということを表しています。対して東日本は、日照時間も多くて降水量も少ない状態でした。つまり、太平洋の強い亜熱帯高気圧に覆われて、猛暑で雨も少なかったということです。西日本が興味深いのは、降水量も多いのですが、日照時間もかなり多くなっていたことです。これは7月の豪雨の後に、かんかん照りになったことによります。沖縄は、雨が多くて日照も少なかったのです。これは、台風が多く発生したことの影響を物語っています。
●2018年7月の西日本豪雨
まずは、平成30年7月豪雨について見ていきます。これは、いわゆる西日本豪雨ですが、気象庁はその期間を、6月末からの11日間としています。上の図は、その11日間積算の雨量に関する分布図です。図において黄色で示したように、総降水量が400ミリメートルを超える地域が、九州から四国・中国・近畿、それから東海西部、これらにかけて広く分布しています。
この時の全国の7月上旬における総降水量は、685地点におけるAMeDASの観測を平均しますと、雨の少なかった関東までも含めて216.8ミリメートルでした。これは実は、AMeDASのシステムが完成して以降の過去35年を見ても、最大の降水量でした。ですから、今回の豪雨がいかに広域の豪雨であったか、それが分かると思います。またこれは、その前の年に起こった九州北部豪雨がかなり地域的だったことと非常に対照的であるといえます。
それから、もちろん局地的な雨量も非常に多くなっていました。最大値を記録したのは高知県で、1800ミリメートル以上でした。岐阜県でも1200ミリメートルを超えています。しかしながら、実は最も被害が多かった瀬戸内地域は、400ミリメートルからせいぜい600ミリメートルくらいでした。
●西日本豪雨の実態を解明する
では、この豪雨の実態がどういったものであったかを説明します。この時には、特別警報が11の府県に出されて、犠牲者が230名を超えています。土砂崩れや崖崩れ、あるいは流木による被害、それから洪水・浸水による大きな被害が出ました。上の資料の図は岡山県の様子ですが、破線が平年の雨量を表しています。平年では270ミリメートルから80ミリメートル弱なのですが、2018(平成30)年にはほぼ倍の雨が降っています。
実際の雨量を見てみますと、3回ぐらい非常に強い雨が降ったことが分かります。青い棒グラフが1時間降水量を示していますが、これが最大で50ミリメートルぐらいでした。この1時間降水量のピークが3つぐらいあったのですが、これがかなり長い期間降っていた、つまり持続したというのが、今回の雨の特徴です。その様子を、左のレーダーとそれから衛星の赤外画像によ...