●西日本豪雨の要因1:熱帯由来の水蒸気と日本周辺海域における蒸発
前回お話しした2018年の西日本豪雨をもたらしたその雨の源はもちろん、熱帯から運ばれてくる多量の水蒸気です。ではそれがどの程度だったかということが、上の資料で示されています。以前に数値天気予報について説明した時に触れましたが、われわれには大気の歴史をずっと記録した数値データがあります。これらを「再解析データ」と呼ぶのですが、それが過去60年分ありますので、それを見ていきます。
右上の図は、1月から12月における、四国の南海上を通過した水蒸気の量、つまり輸送量を表しています。ここで、灰色の線が各年の数値を示していて、赤い線が2018年の数値を表しています。また、緑の線が平年値になります。これを見ますと、文字通りの最大ではないですが、過去最大級の量の水蒸気が運ばれています。
このように熱帯から運ばれてきた水蒸気が、収束することによって雨になるわけです。その収束量が西日本上空でどうだったかというと、これはデータ上、圧倒的な1位です。これはつまり、熱帯から運ばれてきた大量の水蒸気がそこで雨となるような、そういった状態が非常に顕著であったということを意味します。これはなぜかといえば、梅雨前線がそこに停滞していたからです。
これには実は、熱帯からだけではなくて、日本周辺の黒潮域からの蒸発も寄与しています。
それが上の資料なのですが、これはメソ予報のデータを使ったものです。つまり、より細かい場が分かるものです。これらは海からの蒸発量と海上風の偏差、つまり平年からのずれを表しています。緑の破線が梅雨前線ですが、この梅雨前線に吹き込むように2つの強い気流があることが分かります。東シナ海南部から吹き込む流れと、太平洋高気圧のへりを回るように南から吹き込む風、その2つの気流がこの西日本で合流してることが分かります。
図の赤い部分は普段に比べて蒸発が多いところですが、梅雨前線に流れ込む気流の下で蒸発が普段よりも多いことが分かります。それだけ海からの水蒸気が供給されていることが分かります。また、オホーツク海からの高気圧も強くて、日本海でも実は、強い北東風に伴って蒸発が非常に多くなっていました。ただ、これがどこまで影響し...