異常気象を分析する
この講義は登録不要で無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
2018年に西日本豪雨をもたらした二つの要因
異常気象を分析する(2)西日本豪雨二つの要因
中村尚(東京大学名誉教授/東京大学先端科学技術研究センター シニアリサーチフェロー)
2018年の西日本豪雨はどのような原因によって発生したのか。今回の講義では、2つの原因から西日本豪雨が説明されるとともに、それをグローバルな気候の構造に位置づけて解説する。(全5話中第2話)
時間:11分33秒
収録日:2019年3月26日
追加日:2019年7月30日
≪全文≫

●西日本豪雨の要因1:熱帯由来の水蒸気と日本周辺海域における蒸発


 前回お話しした2018年の西日本豪雨をもたらしたその雨の源はもちろん、熱帯から運ばれてくる多量の水蒸気です。ではそれがどの程度だったかということが、上の資料で示されています。以前に数値天気予報について説明した時に触れましたが、われわれには大気の歴史をずっと記録した数値データがあります。これらを「再解析データ」と呼ぶのですが、それが過去60年分ありますので、それを見ていきます。

 右上の図は、1月から12月における、四国の南海上を通過した水蒸気の量、つまり輸送量を表しています。ここで、灰色の線が各年の数値を示していて、赤い線が2018年の数値を表しています。また、緑の線が平年値になります。これを見ますと、文字通りの最大ではないですが、過去最大級の量の水蒸気が運ばれています。

 このように熱帯から運ばれてきた水蒸気が、収束することによって雨になるわけです。その収束量が西日本上空でどうだったかというと、これはデータ上、圧倒的な1位です。これはつまり、熱帯から運ばれてきた大量の水蒸気がそこで雨となるような、そういった状態が非常に顕著であったということを意味します。これはなぜかといえば、梅雨前線がそこに停滞していたからです。

 これには実は、熱帯からだけではなくて、日本周辺の黒潮域からの蒸発も寄与しています。

 それが上の資料なのですが、これはメソ予報のデータを使ったものです。つまり、より細かい場が分かるものです。これらは海からの蒸発量と海上風の偏差、つまり平年からのずれを表しています。緑の破線が梅雨前線ですが、この梅雨前線に吹き込むように2つの強い気流があることが分かります。東シナ海南部から吹き込む流れと、太平洋高気圧のへりを回るように南から吹き込む風、その2つの気流がこの西日本で合流してることが分かります。

 図の赤い部分は普段に比べて蒸発が多いところですが、梅雨前線に流れ込む気流の下で蒸発が普段よりも多いことが分かります。それだけ海からの水蒸気が供給されていることが分かります。また、オホーツク海からの高気圧も強くて、日本海でも実は、強い北東風に伴って蒸発が非常に多くなっていました。ただ、これがどこまで影響し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
科学的思考はなぜ大切か(1)「状態図」という概念
科学的思考とは「なぜ?」を追究していくこと
岡部徹
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
知性の進化と科学技術文明の未来(1)ヒトは本当に賢いか
なぜ人類は進化できたか?…5つの環境要因と脳の発達
長谷川眞理子
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
星はなぜ自ら輝くのか…宇宙と銀河の「現在の姿」を概観する
岡村定矩

人気の講義ランキングTOP10
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に記された「媚態表現」の真相と人心掌握術
上野誠
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(1)会ってみたプーチン…その実像
ロシア人の見る「ロシアの歴史」を知るとロシアがよくわかる・・・実際に会ってみたプーチンの印象とは?
上月豊久
戦国武将の経済学(3)豊臣秀吉の経済政策
豊臣秀吉の驚愕の国内貿易…莫大な財力を生んだ経済政策
小和田哲男
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男