「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史
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宇宙開闢についての量子力学の2つの説…そしてビックバン
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(9)宇宙開闢からビックバンへ
科学と技術
岡朋治(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)
宇宙開闢について研究する場合、量子力学的に取り扱わなければならないことが明らかになった。そこで出てきたのは、ビレンケンの「『無』からの宇宙創生論」と、ホーキングとハートルの「無境界仮説」である。それぞれどのような説なのか。そして、宇宙開闢直後、ビックバンまで、宇宙では一体何が起こっていたのか。(全12話中第9話)。
時間:7分25秒
収録日:2020年8月25日
追加日:2021年2月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●宇宙開闢について研究から出てきた2つの説


 あまりにも小さい宇宙、そういうものは量子力学的に取り扱わねばなりません。そして特異点から発生する宇宙、特異点というものはすべてが発散する無限小の点ですから、そういうものをそのまま取り扱うことはできないわけですね。なので、宇宙開闢、つまり宇宙の始まりについて研究する場合には、量子力学的に取り扱わねばならないとなります。

 そういうところで出てきた説として、2つの説があります。1982年にアレキサンダー・ビレンケン氏が、「『無』からの宇宙創生論」を提唱しました。これはこれまでに申し上げました、真空のゆらぎから量子力学的な効果の一つである「トンネル効果」(たとえ壁などがあっても、そこをシュルっとつき抜けてくる効果)によってとても小さな宇宙が生まれるという理論です。この宇宙のスケールは「プランクスケール」といわれる10-35m程度といわれています。このように、本当にゆらぎからポッと生まれるという説を提唱したのがビレンケン氏です。

 そして、1983年には、スティーヴン・ホーキング氏とジェームズ・ハートル氏が、「無境界仮説」を提唱しました。これまたやや難しいのですが、ホーキング氏によると、(映像でお見せしている)スライドの右下の図(縦軸が時間で、横軸は空間の大きさだと思ってください)で一番下が宇宙開闢の地点ですが、特異点定理で証明されたのは、アインシュタイン方程式(一般相対性理論)に従うのであれば、尖った始まりを持たざるを得ないということです。でも、ここでは物理法則が記述できない(適用できない)ので、とても望ましくないわけです。

 そこで、彼らが考えたのは、「宇宙は虚数の時間の中で生まれる」ということです。これを説明するのは非常に難しい。虚数とは、2乗するとマイナスになるような量で、虚数単位として「i」というものがあって、iは2乗すると-1になるというものです。

 時間を実数ではなくて虚数で考えると、宇宙の進化は最初の段階において、先述した尖った状態ではなく、丸い、どこに境界があるのか分からないような状態で始めることができるということを言い始めたのです。これを「無境界仮説」といいます。

 最初は数学的な手法として導入したようですが、そ...

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