「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史
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量子力学の歴史…始まりはアインシュタインの光量子仮説
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(8)特異点定理と量子力学
岡朋治(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)
宇宙はどうやってつくられたのか。この問題を回避しようとしたのが「振動宇宙論」である。しかし、この理論はエントロピーの問題によって挫折する。これに対して、ホーキンズとペンローズによって「特異点定理」が提唱されるのだが、そうすると「とても小さな状態から宇宙は始めなければいけない」ということになる。これは、どんな理論もそのままでは取り扱えないことを意味する。そこで、宇宙解明のために必要となってくるのが量子力学である。(全12話中第8話)
時間:8分29秒
収録日:2020年8月25日
追加日:2021年1月30日
カテゴリー:
≪全文≫

●振動宇宙論の挫折


 ビッグバンというものがまずあったということは、観測的に確認されたといっていいと思います。ただ、その前はどうなっているのかというのが、この次の話になります。それは、宇宙がどうやってつくられたかという話です。

 当然、宇宙は膨張していますから、ビッグバン以前にもさらに小さな状態があったに違いないということになります。そうすると、突き詰めれば無限小の点になってしまいます。それは物理的には取り扱えない、とても大変な状態ですので、できるだけそれを避けようとする動きが1930年代にはありました。

 例えば、宇宙は振動を繰り返すといったものです。スライドの右上の図の通り、横軸に時間、縦軸に宇宙の大きさを取ると、膨張したものはいずれ収縮に転ずることが分かります。一点とはいわないまでも、あるところまで収縮して、「ビッグバン」と呼ばれるような状態にまで持っていく(収縮した最後は「ビッグクランチ」といわれます)。このビッグバンを繰り返して、振動を永劫続けるということで、膨張と収縮を永遠に繰り返す宇宙が提唱された時期がありました。

 ただこのモデルは、そのままでは成功しません。なぜかというと、熱力学の法則で「エントロピー増大の法則」があり、同じことを何度も繰り返せないからです。物事は乱雑な方向に、乱雑な方向に行くということです。

 それを考慮すると、振動宇宙は実は、スライドの右の図のようにどんどん大きくなっていき、その周期もだんだん伸びていくということになります。これを「定常的な宇宙」といいますか、「永劫に続く宇宙」という理論の立場からすると、あまり望ましくはないのです。


●ホーキングとペンローズによる「特異点定理」


 そうこうしているうちに、1965年に「特異点定理」が証明されます。これは有名なスティーヴン・ホーキング氏とロジャー・ペンローズ氏の仕事です。

 「特異点定理」とはどういうものなのか、説明します。アインシュタインの理論に従って宇宙全体を考えると、膨張宇宙は特異点というものから始まらざるを得ない。もう一つはブラックホールの中心にもその特異点は現れるのですが、彼らが証明したのは、特定の状況下で特異点が出現するということです。

 特異点とは何かというと、...

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