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ニュートン力学が証明した地動説の正しさ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(4)宇宙観の変遷その3

岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
情報・テキスト
アイザック・ニュートン
コペルニクスの地動説はルネッサンス期以降、活版印刷によってかなり広がっていった。その後、地動説はどのように継承されていき、賛同者たちはどのような運命をたどったのか。そんな折に天才ニュートンが登場するのだが、彼によって天動説が明確に否定され、地動説が正しいことが明らかになる。彼はいったいどのような発見をしたのか。 (全12話中第4話)
時間:05:49
収録日:2020/08/25
追加日:2021/01/03
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≪全文≫

●コペルニクスの賛同者ブルーノ、ガリレオの悲劇


 ルネッサンス期以降の話に入りますが、コペルニクスの地動説は活版印刷によってかなり広がっているわけです。そこで、いろんな人がそれを検証しようと、いろんな説を主張するわけですが、その中で最も過激な説を主張したのがジョルダーノ・ブルーノです。

 ブルーノはイタリアのキリスト教の司祭ですが、司祭でありながら天文の研究をしていて、コペルニクスの地動説に感化された人です。彼もいろんな書物をお書きになっていますが、『無限、宇宙および諸世界について』という文献がとても有名です。

 彼は、コペルニクスの地動説には基本的に賛同します。ただ、太陽が中心にあって、すべてがそれを回るという説には異を唱えるのですね。太陽と同じような星が宇宙には無数にある。そしてそれが恒星であると考えます。そこで宇宙は無限に広がっているという、当時としては革新的といいますか、異端極まりない考えを述べるのです。今にしてみれば、それは正解なのですが。

 さらに過激なことに、彼は、その無数の太陽にそれぞれ惑星があって、それぞれにヒトがいるだろうという宇宙人存在説まで主張するのです。

 彼は(先述したように)キリスト教の司祭ですから、当然問題になり、異端裁判にかけられます。そこで自分の説を捨てるように迫られるのですが、頑としてそれを拒んだために処刑されてしまうという、悲劇の運命をたどるのです。

 同時代、同じイタリアにガリレオ・ガリレイという天才が出現します。ガリレオにはいろんな実績がありますが、天文研究としてとても大きな実績があります。『星界の報告』『天文対話』という書物の中で地動説を強く主張しているのです。

 ガリレオの時代は、望遠鏡が発明された時代です。ガリレオも自作の望遠鏡で木星を観測するのですが、木星の衛星が木星を回る姿を見て、地動説を確信したといわれています。ただ、イタリアでローマに近くキリスト教の影響の強いところですから、当然、宗教裁判にかけられてこの説を捨てるように迫られます。ガリレオは捨てる宣言を書かされて生き延びるのですが、無期懲役の刑を言い渡されます。直後に減刑されることになるらしいのですが、軟禁されて、失意のまま亡くなったそうです。


●ニュートン力学が証明した地動説の正しさ


 その後、イギリスにニュートンという天才が出現します。ニュートンはこれまた数学がとても得意で、有名なのは『自然哲学の数学的諸原理』という書物です。あらゆる自然現象を数学的に記述するということをしたわけです。『Principia(プリンキピア)』と呼ばれることもあります。

 そこにいろいろ書かれていますが、その中で天文にとってとても重要なのは、「万有引力の法則」です。すべての物体がその質量に応じた引力を持つ(引力の作用を起こす)ということです。そして、引力の強さは2つの物体のそれぞれの重さの積に比例し、物体の距離の2乗に反比例する、というものです。

 また、それとは別の「運動の三法則」も、ニュートンによって発見されます。今では「ニュートン力学」ともいいますが、こういう古典力学の基本で数式的に惑星の運動を記述しますと、ケプラーの法則が完全に再現できることが分かったのです。これはとても偉大な発見でした。

 つまり、ニュートンが登場する前までは、天と地はそもそも同じ法則が成り立つとは考えられていなかったのです。アリストテレス以降、天と地は別なものでできていると考えられていたわけですから、ニュートンの発見によって、天と地で同じ法則が成り立つということが明らかになったのです。

 このことによって、天と地の法則が統一され、地球を宇宙の中心とする天動説がいかに荒唐無稽であるか、そうした考え方が支配的になっていきます。つまり、明確に天動説が否定され、より簡単に現象を説明できる地動説がやはり正しいということが明らかになるのです。

 以上が天動説から地動説への話でした。
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