●ニュートン力学の謎を解く鍵となる一般相対性理論
ここから宇宙全体の話に入ります。
これまで宇宙がどのように認識されていたかということをおさらいしてきたわけですが、宇宙が地上と同じ物理で記述できるということが、ニュートンの発見によって明らかになったわけです。そして、宇宙はどのようにその進化、誕生、そしてどう終わっていくのか。そういうことについて考察することができるようになったのです。
そこに、もう一つ考えなきゃいけないことがあります。ニュートンの万有引力の法則と運動の法則です。これはまだ完全なものではありません。というのは、一つの謎があるからです。一つの謎とは、重力質量と慣性質量の同一性についてです。これはアインシュタインでいうところの「等価原理」の一つです。簡単にいうと、重力質量とは、万有引力の力を決定する質量(重さ)、つまり私たちが通常感じる重さのことです。もう一つの慣性質量ですが、これは動きにくさを表す重さのことです。物は押せば動きますが、重いものは動かしにくく、軽いものは動かしやすい。これが慣性質量です。この重力質量と慣性質量は本来、物理的にはまったく異なるものですが、二者が一致するというのは、ニュートン力学では説明されていないのです。
これを説明しようと試みたのがアインシュタインです。等価原理、つまり重力質量と慣性質量の同一性からスタートします。重力場中を自由落下する物体の軌道は、どんなものであってもいいのですが、初期の位置と速度のみに依存して、物体の種類によらないという法則があります。よって、その運動は、そのものそれぞれに解かれるべきものではなくて、それが存在する時空の性質によるものだと解釈します。
なので、物が存在するということは、その物が質量に応じて時空をゆがめ、そのゆがんだ時空の中で別のものが運動するということになります。そのような重力というものの幾何学での記述(幾何学化)を試みたのがアインシュタインなのです。
その結果、出てきたのが「アインシュタイン方程式」です。よって、これは運動の方程式というよりも、幾何学の方程式になっています。時間と空間のゆがみが物質の存在によって決定されるという形をした方程式です。これによって重力を記述しようとしたものが、「一般相対性理論(General Theory of Relativity)」です。スライドの右下に式がありますが、こういう形で書かれています。
ここでは詳しい話は少し難しいので省略しますが、右辺は物質の存在を記述する量です。物質の存在によって右辺が変わるということです。左辺は時空の歪みを記述するものです。この二者を関係づけるのがアインシュタイン方程式で、弱い重力場での近似のもとでは、ニュートン力学に一致するようにつくられることになっています。
●一般相対性理論から予測される5つのこと
この一般相対性理論から予測されることがいくつかあります。それを左側に列挙しました。
第一に「重力レンズ効果」で、重力源の存在によって遠くからの光が曲げられるという効果です。これはニュートン力学でも予測されないことはないのですが、一般相対性理論から予測される量よりも倍程度小さいといわれています。
次に「水星の近日点移動」です。水星の軌道は楕円軌道なのですが、その楕円軌道が閉じないという効果があります。水星は太陽の周辺で一番近くを周る惑星ですから、太陽の重力が一番大きいところを通り得る惑星なのです。そうしますと、ニュートン的に考えられていた力学では完全な楕円軌道を成していたものが、一般相対性理論からの微妙な効果によって、楕円が徐々にずれていくという効果があるということです。これによって、水星が一番太陽に近づく位置が移動していくというのが近日点移動です。この効果と重力レンズ効果の2つの効果については、かなり前から観測されています。
第3に「重力波」です。重力波は重力が波となって伝わるというものです。これに関しては、十数年前に連星パルサーの周期から間接的には存在が確認されていますが、直接検出されたのは2016年です。これは、アインシュタインの一般相対性理論からの予測にぴったりだったということが分かっています。
続いて「ブラックホール」です。ブラックホールという、光さえも出てくることができないような重力の強い天体が世の中にはあるということです。これもほぼ確認されたといっていいと思います。
最後に「動的な宇宙」です。これも一般相対性理論からの予測です。宇宙全体を平均的に取り扱ってアインシュタインの方程式を解こうとしても、どうしても解けない...