「海の哺乳類」の生き残り作戦
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
鼻の穴が1つしかないハクジラの「エコロケーション」とは
第2話へ進む
「海の哺乳類」が海の中で行った「生き残り作戦」とは
「海の哺乳類」の生き残り作戦(1)分類と海牛目の特徴
田島木綿子(国立科学博物館 動物研究部 脊椎動物研究グループ 研究主幹)
「海の哺乳類」は、その進化の過程で一度陸に上がってから再び海に戻って水棲適応した哺乳類についての名称である。彼らは海の中でさまざまな「生き残り作戦」を展開してきた。それはどんな作戦だったのか。今回は海の哺乳類のうち、特に海牛目が水棲適応のために獲得したいくつかの機能に注目する。(全5話中第1話)
時間:10分19秒
収録日:2019年7月5日
追加日:2020年3月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●哺乳類の基本的な特徴


 こんにちは。私は国立科学博物館動物研究部の田島木綿子と申します。私は博物館では海の哺乳類の標本を担当していて、海岸に打ち上がる「ストランディング」という現象にもろもろ携わりながら、標本を使ったり研究をしたりと、いろいろなことをしています。

 今日はそうしたストランディングの活動の中で、まず一番基本となる海の哺乳類というのがどういう生き物なのだろうということをお話しいたします。よろしくお願いいたします。

 まず、スライドを見ていただきたいのですが、2019年3月21日から6月16日まで海の哺乳類を含めた『大哺乳類展2』をやっていました。その副題が「みんなの生き残り作戦」ということで、どうやって哺乳類が今までの進化の過程、あるいはその歴史の中で、いろいろな作戦を生み出して生き残ってきたかということについての展示を行いました。今回のシリーズでは、それにまつわるお話をしながら、海の哺乳類がどうやって今まで生き残ってきたのかということを、お話しします。

 まず、「海の哺乳類」といいますが、「哺乳類って何?!」ということをお話ししたいと思います。

 例えば、教科書的な情報でいくと、上のスライドでご覧いただいているようないろいろな項目が列挙されます。そうすると、皆さんが一番ご存じなのはこの分類群の名前(哺乳)になっているように、お乳を出して育てるということがとても大事になります。あとは、胎生や肺呼吸などが、全て「哺乳類だ」という証になるということで、そうした体の構造だったり特徴があったりします。

 もう少し具体的にいうと、なぜか哺乳類は首の骨(頸椎)の数が7つという法則があります。例えばイルカは、体を見てみると「どこに首があるのか」というくらい首が分かりにくい動物なのですが、スライドの青で示しているところにしっかりと首の骨があります。さらに実際に骨を見てみると、形は少し変わっているのですが、その数はちゃんと7つあるということが分かります。

 一方、同じ哺乳類であるキリンはどうでしょうか。リンの首は長いのですが、その首の骨の大きさは1個1個大きいのですが、数はちゃんと7つあるのです。。

 このように首が分かりにくい、ま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓