「海の哺乳類」の生き残り作戦
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
鼻の穴が1つしかないハクジラの「エコロケーション」とは
「海の哺乳類」の生き残り作戦(2)収斂とエコロケーション
田島木綿子(国立科学博物館 動物研究部 脊椎動物研究グループ 研究主幹)
今回はアザラシやアシカなどの鰭脚類と、ハクジラをはじめとする鯨類について解説する。アシカは前肢を使って泳ぎ、アザラシは後肢を使って泳ぐということや、ハクジラは鼻の穴が1つしかないなど、それぞれの特徴を説明するなかで、重要キーワードとして挙げたのが「収斂進化」と「エコロケーション」だ。それらは一体どんな特徴なのか。(全5話中第2話)
時間:10分16秒
収録日:2019年7月5日
追加日:2020年3月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本の周囲には少ないが、海牛類より種類の多い鰭脚類


 鰭脚類は、ひれあしのある、いわゆるアザラシ、アシカですが、海牛類よりたくさんの種類があって、大体30種類くらい世界中にいます。残念ながらこのなかでたった7種しか日本の周囲にはいないので、鰭脚類が好きだったり研究したいという人にとって日本はあまりいい場所ではありません。ただ、それでも7種はいるということです。

 進化の図を見ると、やはり海牛類や鯨類よりはちょっと早い、まだ若い地層から出ているので、もしかしたら海牛類や鯨類よりは後に進化したかもしれないということが、この図から分かります。


●アザラシ科とアシカ科の違い


 鰭脚類はアシカ科とアザラシ科とセイウチ科と3ついるのですが、それぞれ特徴があるので、簡単に説明します。

 まずアザラシ科です。アザラシ科を見るときにまず何を見たらいいかと言うと、泳ぎ方なのです。アザラシ科は後肢で泳ぐと覚えてください。後肢を左右に振って泳ぐのが、彼らはとても得意なのです。

 一方のアシカ科はどうやって泳ぐかというと、胸ビレを羽ばたくようにして泳きます。なので、アシカ科は前肢、アザラシ科は後肢というように覚えてください。

 上はアザラシ科とアシカ科の違いを見る上で非常に分かりやすい図なので、こちらを使って説明します。

 まず、耳介のある、なしという動物が上と下にいるとします。上の動物はヒゲが平坦である。または、下の動物はちょっとぼこぼこシタヒゲを持っている。こういう動物がそれぞれいるとします。次に上は鼻面が長く、一方、下は鼻面が短い。また、陸上で後肢を腹側の下に曲げることができる種類がいるけれども、下は曲げることができない種類がいる。さらに上は筋肉内精巣、下は腹腔内精巣と若干の違いがある動物がいるということになります。上は先ほどお話ししたように前肢を使って泳ぐ種類で、下は後肢を使って泳ぐ動物がいるとします。

 そうすると、それぞれの動物はどういうものかというと、上がアシカ科になって下がアザラシ科となります。ということで、それぞれの項目をアシカ科とアザラシ科で比較して知っていただくと、分かりやすくなります。


●セイウチが1種しか現存し...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
宇宙に関するニュースを理解するために宇宙の姿を学ぶ
岡村定矩
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子