「海の哺乳類」の生き残り作戦
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ストランディング調査から分かった環境汚染物質との関係
「海の哺乳類」の生き残り作戦(3)ストランディング
田島木綿子(国立科学博物館 動物研究部 脊椎動物研究グループ 研究主幹)
海の哺乳類が海岸に打ち上げられる現象を「ストランディング」と呼ぶが、博物館などに展示されている資料や標本の多くはストランディングの漂着物を活用したもので、そうしたものが新種の発見などにも貢献している。しかし、ストランディングについての調査を進めていく過程で、環境汚染物質との関連性が浮上してきた。(全5話中第3話)
時間:11分28秒
収録日:2019年7月5日
追加日:2020年3月31日
カテゴリー:
≪全文≫

●「ストランディング」という現象は年間300件前後起こっている


 今度は、海岸に打ち上がった海の哺乳類がいるのですが、それを調査するとどんなことが分かって、どんなことに活用できるのか、というお話をいたします。

 実は、日本沿岸には海の哺乳類が海岸に打ち上がってきてしまうストランディングという現象が、年間300件前後起こっているのです。そうすると、1日1頭どこかで何かが死んでいるくらい、実は非常に普通に起こっていることなのです。ただ、残念なことに日本では現状、水産庁の通達として地方自治体がそれらを粗大ごみとして処理をすることになっているため、厄介者的にただのごみとして扱われることになってしまうのです。

 われわれのような博物館の研究者は、それをなんとか研究資料や博物館標本にしたいということで、ずっと前からいろいろと活動していますし、それは世界的にも行われている活動の1つになります。つまり、われわれはストラディング個体を調査研究して、そこからいろいろな資料を得たり、いろいろなことに使ったりして彼らのことをもっともっと知ろうという活動をずっと続けているということです。


●漂着個体を博物館の展示資料や正確なポスターづくりに活用


 それはどういうことに活用できるのかというのを、皆さん疑問に思ったりするので、その一部をご紹介します。

 実はわれわれの上野にある国立科学博物館(科博)には地球館というものがあり、そこではこのようにマッコウクジラという種類の標本がつるされています。それも実は随分と前になりますが、約20年前に静岡県の海岸に漂着して、残念ながら死んでしまったクジラを、われわれがいろいろと調査して処理をし、専門業者に預けたのです。それが、なんと漂着から4年半かけて科博の標本の目玉の1つとして生まれ変わって展示されることになったため、皆さんが見ることができるようになりました。つまり、博物館の展示標本として活用できる、ということが1つあります。

 他にも、特別展や常設展の資料に関しても、90パーセント以上が、ストランディング活動からの情報によるものだったり、その標本だったりします。上のスライド...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
「海の哺乳類」の生き残り作戦(1)分類と海牛目の特徴
「海の哺乳類」が海の中で行った「生き残り作戦」とは
田島木綿子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子