性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT
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SRY遺伝子とは何か?哺乳類の性決定の仕組み
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(2)哺乳類の性分化
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
雌雄同体や性転換を行う生物がいる一方で、ヒトを含む哺乳類の性は、一度決まると自然に変わることはない。遺伝子によって雌と雄が決まる際に、性決定のキーになるのがY染色体上にある「SRY遺伝子」の働きである。いったいどのような仕組みなのか。(全4話中第2話)
時間:9分23秒
収録日:2021年6月21日
追加日:2021年8月17日
≪全文≫

●専門の雄と専門の雌の作り方には二通りある


 さて性が、雄は雄、雌は雌に固定されているものでも、専門の雄と専門の雌の作り方には二通りあります。

 一つは環境決定です。ワニやカメは、卵が孵化する温度が高いと雌になったり、その温度が低いと雄になったりと、環境の温度によって性別が決まります。これはずいぶん不安定で怖いと私は思ってしまいます。「たまたま暖かいところに行って、みんな雌になったり、(あるいはその逆で)みんな雄になったりしたらどうするの?」と思いますが、いろいろな温度差があって、全体としてはうまくいっているようです。

 一方、そうではないものに「性染色体」があります。XかYか、ZかWかなどいろいろありますが、性染色体の組み合わせによって雄になるか雌になるかが決まる動物は結構多いのです。多くの昆虫がそうです。

 鳥は、(性染色体)ZZが雄で、ZWが雌です。哺乳類は逆に、XXで同じ染色体があると雌で、XYだと雄になります。

 進化生物学者はどうしてこれが進化するのかを研究します。性はすごく大事なので、どの生物も全てXXとXYというようにスパっと決まっていると思っていました。しかし、実際には全くそうではなく、例えば「メダカなら、この性染色体」というように、どの生物がどのように性染色体が決まって、どのように成長するのかは、全て同じではありません。

 このように、性決定は本来進化的にすごく複雑な話で、今の生物学では、単純には説明できないことが分かってきました。

 ここまでの結論として、性はもともと繁殖の手段ではなく、自分の遺伝子を変えて多様性を創出する手段として進化したということです。

 子孫の遺伝子に多様性を持たせることを目的とする、つまり自分自身を変えるのではなくて、子孫の遺伝子を違うものにするために、繁殖と性がどこかで結びついたのです。そして、栄養がある卵と、栄養がない精子に分化しました。さらに、はじめから自分は卵しか作らない雌と、精子しか作らない雄という個体が生じたのです。

 しかし、はじめから雄か雌か決めてしまうかどうかは、今言ったように性転換などいろいろあるので単純なことではありません。


●哺乳類の基本構造は雌である


 その中でも...

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