性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT
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多様な性が心地よく生きられる社会にするために
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(4)知識基盤社会での人権
科学と技術
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長)
LGBTは進化生物学の観点からいえば、その存在が広がることはないが必ず発生する、つまり、常にマイノリティの存在である。それゆえ、これまで世界の中で隠されてきたり、ないことになっていたりして、ずっと抑圧され続けてきた。しかし、今は知識基盤社会で、人権についての考え方が広がっている時代である。大事なことは、多様な性が心地よく生きられる社会を実現することではないだろうか。(全4話中第4話)
時間:6分34秒
収録日:2021年6月21日
追加日:2021年8月31日
≪全文≫

●人間以外の動物にもLGBTは存在するのか


 他の動物ではどうなっているかというと、他の動物でLGBTがいるのかどうかの判断はなかなか難しいのです。私たちは野生動物の研究をしていましたが、どうもそうではないかと思われるものは、私たちが短い時間、少ない数の個体を見ている限りではあまり見つかりませんでした。

 ただし、ゴリラをずっと研究されていた京都大学前総長の山極壽一先生は、雄・雄同士でずっとカップルになっている様子を見ています。ただ、繁殖のチャンスがないときに、雄・雄同士が一緒になることは他の動物でもありますが、繁殖のチャンスが実際に目の前に訪れたら、普通はパッと解消して雄・雌同士になります。

 一方、山極先生が見たゴリラは、繁殖のチャンスがやってきても、ずっと雄・雄で一緒にいたということです。つまり、そういうことがゴリラの中で観察されていたので、そこでは(LGBTということが)起こっていたのかもしれません。

 しかし、そういうことがたくさん報告されるほど、私たちはたくさんの動物を相手にして観察しているわけではないですし、野生動物で長く研究するところも少ないのです。人間でも、100人見ていたら一人出るか出ないか、1000人見ていたら一人か二人ということだと、私たちは1000匹(頭)ものチンパンジーやゴリラを見ていないので、(チンパンジーやゴリラにLGBTがいるのかどうか)分からないかもしれません。


●多様な性が心地よく生きられる社会にするべき


 前回お話ししたように、雄と雌どちらかにならないという性の不一致が起こるということは広がりませんが、それは必ず発生します。つまり広がらないゆえに、人間の社会では常にマイノリティです。差別されたといいますか、その存在が認められずに隠されたりしてきました。特に人間の世界で権力の継承において、必ず自分の子どもを継がせることがとても大事です。そのため、そこに関わらないような存在はずっと見ないことにされたり、いないことにされたり、消されたりしてきました。

 世界の多くの文化の中で、LGBTは隠されているか、ないことになっているか、いずれにしても実際にずっと抑圧され続けてきたのです。

 しかし、今ではこういう知識がわれわれの手に入りました。そして、その人たちがただ勝...

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