性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
母親の胎内環境の状態が及ぼす胎児の性分化への影響
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(3)性分化の複雑性と性の不一致
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
雌と雄への性分化には、遺伝子のさまざまな働きによって起こる複雑な過程がある。さらにこれは胎児のときに起こることから、母体からの影響を受けることになる。そうした中、からだの性と脳の性が不一致となり、典型的ではない雄あるいは雌が発生する可能性がある。実際にそうしたことが毎世代、発生しているのだが、なぜ広がっていかないのか。(全4話中第3話)
時間:8分02秒
収録日:2021年6月21日
追加日:2021年8月24日
≪全文≫

●性分化の過程はとても複雑


 これは本当に大変複雑な過程で、全て解明されたとは全然言えません。例えばSRY(遺伝子)があって、何週目かにそれがスイッチオンになるといっても、それは誰がオンにするのでしょうか。また、どうしてオンになるのでしょうか。

 そこには別の遺伝子があって、ヒストンタンパク質の巻きを緩くすることで発現するようになるということがごく最近発見されたりしていますが、全行程についてはまだ解明されてはいません。

 このように性分化の過程はとても複雑なので、先ほどいったように、どの段階でも齟齬が起こり得ます。例えば、SRYが働かないことがある。また、テストステロンが出てこないこともある。テストステロンはそのまま働くのではなく、一回テストステロンがデヒドロテストステロンに変わり、そのデヒドロテストステロンによって体の雄化が起こるけれども、脳みそにはデヒドロテストステロンではなく、テストステロンがそのまま出ていく。このように性分化はすごく複雑です。

 そういったホルモンのどれかが出てこない、欠損していることもあります。また、ホルモンには必ず受容体が必要で、その受容体に結びついて初めて働きます。しかし、受容体はまた別に作られるので、ホルモンが出てきても受容体がなければ結局、変化は起こりません。

 以上のように、SRYが働かない、雄化ホルモンのどれかが欠損する、あるいはホルモンは出ても受容体が欠損するなどの理由で、うまく雄にならないことがいっぱいあるのです。

 雌はだいたい簡単で、XXであればSRYがないので、そのまま雌になるということで良いのですが、先天性副腎皮質過形成症という病気があります。女性でも副腎皮質からテストステロンは出ていて、そのテストステロンはまた変えられて、エストロゲンという女性ホルモンになります。実は女性ホルモンと男性ホルモンはほんの少ししか違いません。

 このように、女性の副腎皮質からテストステロンが出ているのですが、それが過剰に出る症状があります。そうすると、XXの雌が雄化してしまうことが起こります。


●性分化における母体からの影響


 もともとデフォルトは雌になるようになっており、何もなければそのまま雌になるので、雌のほうがだいたい簡単です。SRYがないので...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(5)羽柴軍団の戦い方
長期包囲戦が得意!?“軍事的天才”秀吉の戦い方の特徴
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(6)分別からの超越
ネガティブ・ケイパビリティとは?信じて待つことの意味
津崎良典
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(3)言語モデルと「自己教師あり学習」
正解がタダ!?大規模言語モデルの「自己教師あり学習」とは
岡野原大輔
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎