AIに善悪の判断を教える方法~新しい道徳論
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
人間には動物とは異なる文化の仲間意識がある
AIに善悪の判断を教える方法~新しい道徳論(4)人間と動物の道徳の違い
鄭雄一(東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授)
東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻教授の鄭雄一氏は、人間の道徳に個別のおきてと個別の社会を超えた共通のおきてがあるという二面性の認識が重要であると説く。この人間の道徳は、バーチャルな仲間意識を持つ点、つまり文化がある点で動物とは異なるのだという。(全8話中第4話)
時間:10分35秒
収録日:2018年6月20日
追加日:2019年6月18日
≪全文≫

●「仲間らしくしなさい」


 前回の仮説ですが、どうやら確かにもともとある二面性の一面のみを強調したのが、これまでの考えの主なものであったということが分かります。ではこれは、全く毛色の異なるおきて2つを単に、接着剤で継ぎはぎしたものなのか、それともさらに上位のおきてがあって、統合できるのかということになります。

 このあたりの話は1つのステートメントにまとめることができます。それは仲間らしくしなさい、という命令です。


●個別のおきてと共通のおきてという道徳の二面性


 この命令は二面性を持っています。1つは個別のおきてで、これは仲間らしくしなさいと言われたとき、仲間と同じように考え行動しなさいということです。この内容は仲間の単位と共に変化します。

 的確な例はあいさつです。握手をするのか、頭を下げるのか、これは仲間の範囲とともに変化します。日本だったら頭を下げる、アメリカだったら握手をする。でもこれは握手をする方が正しいとか、頭を下げる方が間違っているとか、そういうことでは全くなく、相対的なものにすぎません。異なる地理・気候で展開する社会ごとに異なる、ある枠組みに基づく思考や行動の標準化であるということが分かります。これは守ると社会のまとまりが良くなりますが、多様性を阻害する可能性があるおきてでもあります。

 もう一方で、仲間らしくしなさいというとき、仲間に対して危害を加えないという命令を意味する場合があります。これは仲間の範囲が変わっても内容は不変です。日本にいようがアメリカにいようが、仲間に対して危害を加えるな、この命令は絶対的に守らなくてはいけません。なぜか。これを守らないと社会の形成や維持ができないからです。社会の中では協力・分業するわけですから、そのときに仲間に対して危害を加えていいと言ってしまうと、社会が全く成り立ちません。社会のための最小限のおきてであるということが分かります。

 先の回で仲間の話をしたのですが、今回もう1つ重要なことはこのデュアリティーの認識です。二重性があるわけです。われわれの道徳の基本原理は仲間らしくしなさい、ですが、その中に個別のおきてと共通のおきてという二重性があって、このデュアリティーを認識することが大事です。われわれは普段...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄