AIに善悪の判断を教える方法~新しい道徳論
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道徳は違う側面から見ると異なって見える円柱だ
AIに善悪の判断を教える方法~新しい道徳論(3)仲間と道徳の関係
鄭雄一(東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授)
見方を変えると道徳の意味が異なると、鄭雄一氏は指摘する。宗教では人を殺してはならないとされているのに、なぜ戦争は否定されないのか。鄭氏はここで、人とは仲間の意味だと見方を変えて考えるという斬新な議論を提示する。(全8話中第3話)
時間:10分59秒
収録日:2018年6月20日
追加日:2019年6月14日
≪全文≫

●道徳は円柱であり、違う側面から見ると異なって見える


 では、ここまで問題点ばかりを挙げて、何も提案することがないのかということになります。道徳に基本原理はあるのかどうかということです。


 今まで道徳について議論してきた人たちには、道徳は個人個人で違うと言う人と、いや、それは理想の社会があって、きちんと一義的に決まると言う人がいます。その人たちはずっと何千年も争ってきて、全然解決の糸口がないわけです。これはどうしてだろうと思うのですが、実はこうではないかと考えました。これだけ頭のいい人たちがこれだけ長年やってきたことなので、全部が間違っていることはないだろう。しかし、これは一部真実を含んでいるが、不完全な評価ではないだろうか、と考えたのです

 実は道徳というのはこのような円柱のかたちをしていて、上からだけ見ていると「丸だ、丸だ」、「個人だ、個人だ」と言うし、横からだけ見ていると、「社会だ、社会だ」、「四角だ、四角だ」、と言っているのではないのかという仮説を立てました。これが本当であれば、例えば具体的なおきての中に、こういうことが表れているはずなので、戒律を調査してみましょうということになりました。


●全ての宗教に共通の項目の抽出


 法律でもいいのに、なぜ宗教の戒律で調べることになったかですが、さっき言った個人中心の考え方というのは、残念ながら具体的なおきてを決めてくれませんので、調査のしようがありません。ですから社会中心のおきてを中心に調べるということになります。

 例えば、仏教の五戒というものがあります。このように代表的なおきてをいろいろな宗教から持ってきて、まず共通項を抽出してみました。

 そうすると3つ抽出することができます。「殺人をしてはいけない」、「人のものを盗んではいけない」、「人をだましてはいけない」。いろいろな書き方がありますが、共通するステートメントを粗視化するとこのようになっています。これはさらに、「人に危害を加えるな」、と粗視化することができると思います。これは漢の高祖が漢中に入った時に出した法三章に、非常に似ているものです。一部ちょっと違いますが、かなり似...

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