テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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自分を知るためのヒントは「いいな」と思う瞬間にある

生き抜くためのチカラ~為末メソッドに迫る(2)柔軟に観察する

為末大
一般社団法人アスリートソサエティ代表理事/元陸上選手
情報・テキスト
『為末メソッド 自分をコントロールする100の技術』
(為末大著、日本図書センター)
「自分の人生はこれだ」と分かりやすく定まることはそうそうない。だから、日常の生活の中で「いいな」とか「好きだな」という小さな瞬間を集めながら、積み上げていくほうが、結局は近道なのではないだろうか。他者に委ねすぎるのも考えものだが、他者のほうが見えていることもあると、柔軟に考えることも肝要だ。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:27
収録日:2021/06/30
追加日:2021/09/17
キーワード:
≪全文≫

●「いいな」「好きだ」と思う瞬間にヒントがある


―― 冒頭でも申し上げたように、「何をやったらいいのだろう」という迷いの中にいるというケースも多いと思うのです。そこで非常に参考になる言葉を為末さんが書いていらっしゃいます。例えば、「自分をもっと知るために、『いいな』と思う瞬間を集めてみる」。これは、何をやっていいか分からないときにどうするかについてのヒントだと思うのです。これについて教えてください。

為末 社会に出てくると、「これはこんなふうに考えましょう」というように、いろいろなフレームワークがありますよね。例えば、山に登るとして、その山に登るためにはこんなルートがあって、こういう装備が必要で、仲間はこんな人たちが必要だとか、そういうことを考えて登っていくわけです。この山に登るというプロセスはいくらでも合理的にできるし、いろいろなものも持ってくることができる。でも、一番肝心な「なぜこの山に登りたいのか」というところは、説明がつかないのです。

 だから、私は人生で一番説明がつかないものは、「好き」という気持ちとか、「私はこれがいい」と思うことだと思うのです。これを理屈で考えようとしてしまうと、全然到達できない。だから、人生を振り返ってみて、本当にちっぽけな「いいな」と思ったり、「好きだ」と思う瞬間があって、そこにヒントがあると思ったのです。

 よく観察していると、「好きなことは何?」と聞かれたときに、大げさに考えすぎている人は、そのヒントを見つけにくいと思うのです。雷に打たれたように、人生で進むべき道が見つかったり、「好き」に気づいたりするのではなく、例えば、会社に向かっていくときの道が好きなのか、帰りながらぶらぶらしている道が好きなのかとか、それくらいのレベルのところから、ヒントを探してみる。なんとなく引き締まる瞬間が好きか、それとも解放される瞬間が好きかとか、そんなことが分かってくると思うので、日常生活のレベルから見つけてくるのが、まずは大切だと思います。

―― いま、雷に打たれたようにというお話がありましたけど、そうやって気づく人はそんなにいないでしょうね。

為末 いないと思いますね。「好きなことを極めた人たちこそが、オリンピック選手だ」というイメージがありますが、みんなで飲み会をすると、「考えてみると、気がついたら、おやじがやれと言ったのでやっていた」という選手は結構います。もちろん、やっていくうちに、その中から好きな要素を見つけてきたり、本当に嫌で競技を変えた人間とかもいますが、運命の出会いというのはそうそうない。みんな、あの手この手で探りながら、なんとなく見つけていくというのが本当のところだと思います。

―― 「これが俺の運命だ」というものを探すのではないということですね。今まで生きてきた中で、例えば「社会科が好きだ」と言っても、たまたまその先生がいい先生であっただけかもしれないですし、それが運命なのか縁なのかは、分からないところがありますね。

為末 そうですね。だから1000個くらいあるパーツの中から、たった一つしか自分にはまらないジグソーパズルを探しているイメージだと、おそらく生涯にわたって、好きなものを探し続けることになると思うのです。

 でも、私の場合で考えても、一人で何かを極めていくのが好きだったというくらいなのです。だから、才能はなかったでしょうけれど、将棋でも良かったし、ハードルでも良かったし、エンジニアでも良かったのだと思います。

―― 個人競技的なものということですね。

為末 はい。そのくらいの枠組みだと思っています。だから、足が速かったので向いていましたが、ハードルでなければならなかったのかについては、客観的に見ると、あまり必然性はなかったとも思います。

―― そうなると、例えば、子どもが迷っているときに、「おまえ、ちょっといいなと思う瞬間を集めてみろよ」というのは、非常にいいメッセージだと思うのです。「運命の出会いというよりも、自分がやっていること、つまり、今までやってきたことで、少しでも雰囲気が合うものを幅広く捉えて、いろいろやってみたら?」というようなニュアンスがいいかもしれないですね。

為末 そうですね。だんだん土台を作っていくような感じだと思うのです。「これは好き」「これは嫌い」というものを、まずは大ざっぱに区切ってみる。例えば、「みんなと協力するのが好き」「一人で何かやるのが好き」くらいでまずはくくってみて、「なるほど。一人でやるのが好きなんだ。じゃあ、その中でも目標から逆算してやるのが好きなのか。それとも、その瞬間瞬間に思いついてやるのが好きなのか。どっちかな」とか。そのくらいの粗さで積み上げていく。

 だんだん絞り...
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