〈続〉認知バイアス~その仕組みと可能性
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「2年目のジンクス」は本当?原因の推定に関わるバイアス
〈続〉認知バイアス~その仕組みと可能性(5)思考のバイアス〈後編〉
鈴木宏昭(元青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授/博士(教育学))
止まった時計を見て「電池切れかな」と考えるように、私たちは日常的に現象の原因を推定する「アブダクション(仮説推論)」を行っている。そんな何気ない普段の思考の中にも認知バイアスが潜んでいる。今回は、ある病気による検査の確率や「2年目のジンクス」など具体的事例をもとに、原因の推定に関わるバイアスを紹介し、私たちは判断のどこにバイアスがかかりやすいかを明らかにする。(全5話中第5話)
時間:15分59秒
収録日:2023年1月23日
追加日:2023年5月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●「アブダクション」は日常的に行われている原因の推定


 次に、「アブダクション(仮説推論)」というものを取り上げてみたいと思います。アブダクションという言葉も、仮説推論という言葉もあまりピンと来ないかもしれないのですが、もっとも典型的にアブダクションが現れるのは原因の推定なのです。

 私たちはあることを観察すると、半ば自動的にその原因を考えます。例えば、時計が止まってしまったときに「電池が切れたのかな」とか、友人が不機嫌な顔をしているときに「何か嫌なことがあったのか、嫌なことしてしまったかな」とか、あるいは地面が濡れているときに「雨降ったのかな」とかです。あるいは、自分が乗っているバスが急に止まったときに「赤信号で止まったのかな」「渋滞なのかな」「ガス欠かな」(ガス欠はあまりないでしょうが)とか、それからテストの点が資料に挙げたようなとき(よかったとき)、「猛勉強したからなのか」「カンニングしたからなのか」「簡単なテストだったのか」とか、そういういろいろな結果を観察すると、それをもたらした原因を考えたくなるわけです。

 非常にこれも大事なことで、これ抜きに知的な人間とはいえないというくらい、ごく基本的な認知の機能です。


●「事前確率の無視」がもたらす、誤った原因の推定


 実は原因の想定においても認知バイアスというものが出ています。これも非常に有名な問題で、ドイツの心理学者のゲルト・ギゲレンツァーという方が使った問題です。

 40代の女性の乳癌の比率は1パーセントである。乳癌を持つ人にマンモグラフィー検査を行うと、80パーセントの確率で乳癌であるという結果が出る。「乳癌を持つ人に」というのはどういう意味かというと、乳癌だということが生検などを使って、もう分かっている人という意味です。一方、乳癌でないということが分かっている人に同じ検査を行うと、9.6パーセントの確率で乳癌であるという結果が出ます。擬陽性ということです。ある40代の女性がこの検査で陽性、つまり乳癌であるという結果が出たのですが、この人が実際に乳癌である確率はどれほどかという問題です。

 どうでしょうか。これはそんなに簡単ではないので、すぐに答えは出ないので...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ