テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

手洗い、隔離、BCG接種の効果とは?

COVID-19戦時下の今できること(2)感染拡大の防止策

堀江重郎
順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授
情報・テキスト
感染の拡大を防ぐためには、個人レベルでは手洗いが、集団レベルでは隔離や移動制限が効果的である。しかし最近、BCGワクチンを積極的に摂取してきた国ほど、コロナウイルスの感染者が少ないのではないかということも議論され始めている。(全5話中第2話)
時間:09:36
収録日:2020/04/02
追加日:2020/04/13
≪全文≫

●ウイルスは物の表面にどれほど残るのか?


 さて、われわれができることとして非常に強調されているのが、「手洗い」です。これは、ニューヨークタイムズの中で取り上げられている絵です。ウイルスがどれくらい色々な物の表面に残っているのかが示されています。例えばお金・コインの場合、4時間位ウイルスが残っています。段ボールのようなものですと24時間、ペットボトルでは3日です。金属であるとか食器など、われわれが普段手にするものも3日間程度、ウイルスは残っています。車のキーやドアについても同様です。このことからしても、十分に手を洗うことが必要だろうと思います。特に、公共の交通機関、あるいは人が多く出入りするエレベーターや手すり等は、十分に気をつけていただくに越したことはないと思います。


●隔離と移動制限による感染への効果


 これはワシントン・ポストのウェブサイトに出ていた、非常に面白い図です。どうして接触を防ぐことが必要かが示されています。最初の図では、移動制限がない場合、どのように感染が伝播していくかを表しています。非常に速い時間で多くの人が感染していきます。その中で回復してくる人も見られます。つまり、患者数が非常に多くなるのですが、比較的短期間で終息をしていくということです。現在のアメリカ、あるいはイギリスですね。イギリスの場合は、当初、このように「集団免疫をつける」という方向で、比較的、移動制限をとらない手段を採っていました。しかし最近、方向転換しました。移動制限がない場合には、このように急激に患者が増えていきます。

 それでは隔離した場合はどうでしょうか。中国の武漢のようなケースです。隔離してしまうと、隔離された部分での感染が急激に起こってきますが、外では比較的少なくなります。しかし感染を解除した後に、やはり患者が発生してくるという状況が起こります。現在の中国では、無症状の感染者が少なからずいると報道されています。隔離が終わった後で、果たして感染が再び起こらないかどうか。これが興味があるところだと思います。

 最近の移動制限の場合はどうでしょうか。特に欧米では、非常に厳しい移動制限がなされています。「4人に1人が動いても良い」と仮定した場合には、全員が動く場合に比べれば、患者数の増加も非常にゆるやかです。ゆっくりと増えていくということで、その間に医療体制を作っていくことができます。現在の日本の状況も、これに当てはまると思います。そうして時間を稼ぐ中で、感染から回復してくる人も増えてきます。回復してきた人は、一種のバリアになるので、こうした方向を日本は現在採っているのです。

 さらに、移動制限として8人に1人が動いても良いと仮定した場合を考えてみます。先ほどに比べて、さらに患者の数が減ります。ただ問題は、患者の数は少ないのですが、回復する人も遅れていくということです。そのため、感染問題が長く続いてくることも考えられます。ですから、移動制限は有効な方法ではあるのですが、これをどのぐらいの期間続けるべきかということを、おそらく現在、専門家の方々がシミュレーションしているのではないかと考えられます。


●スペイン風邪への過去の対応比較は、現在の参考になる


 実は、こうした方法は、1918年のスペイン風邪の時に、行われたものと全く同じです。これは、スペイン風邪の時にアメリカの2つの都市(セントルイス、ピッツバーグ)の死亡者の数をプロットしたものです。この2つの都市は、おそらく当時、同じくらいの規模だったのですが、結果としてセントルイスでは10万人当たり約400人が亡くなりました。ピッツバーグでは10万あたり800人が亡くなりました。死亡者が2倍になったのです。

 大きな違いは、セントルイスの場合、感染が出てすぐ、学校を閉鎖し、公共の場での集会を禁じたことです。グラフを見ていただくと面白いことに、それによって感染者は増加しつつも、山が抑えられています。抑えられたところで1度学校を再開し、集会を許可したため、もう一度非常に大きな山が出てきています。これに慌てて、もう一回、学校を閉鎖・集会を禁止し、感染が終息しました。

 一方ピッツバーグの方は、当初、学校は閉鎖せず集会のみを禁止しました。そうしましたところ、非常に大きな患者の増加が出てきまして、自然な形でそれが終息していきました。比較的速い終息時間でしたが、死亡者はセントルイスの倍近くに上りました。現在、世界各国で行っている公衆衛生対策は、この100年前の...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。