ウイルスの話~その本質と特性
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ウイルスの大流行を招くのはグローバル化の負の側面
ウイルスの話~その本質と特性(3)ウイルスの起源とグローバル化との関係
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
ウイルスの起源はどこにあるのか。起源はウイルスごとに異なるが、サル、ブタ、ニワトリ、水鳥などがウイルスに感染し、ヒトと一緒に暮らすことで接触が高まるあいだにそのウイルスが突然変異を起こし、ヒトに感染するようになるケースが多い。特に新しい種に感染するようになったウイルスは強い症状が出やすいので、適切に対処する必要がある。近年、こうしたウイルスの大流行は急速なグローバル化の帰結でもある。(全3話中第3話)
時間:10分20秒
収録日:2020年2月17日
追加日:2020年3月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●ウイルスの起源はどこにあるのか


 それでは、ウイルスの起源はどこにあるのでしょうか。起源はウイルスごとに異なります。

 例えば、前回お伝えしたHIVの起源は、おそらくアフリカのサルであると考えられています。アフリカには、非常に多くの種類のサルが住んでいます。それら多様なサル類に免疫不全を引き起こすSIV(Simian Immuno-deficiency Virus、サル免疫不全ウイルス)というウイルスの遺伝子の存在が解析によって分かっています。このSIVはHIVに非常に似ているので、HIVはサル起源だと考えられているのです。

 シリーズ内で「ウイルスが感染するためには、突起が合致する必要がある」といいました。もともとのSIVはサルの細胞と合致していましたが、ヒトの細胞とは合致していなかったために、ヒトには感染しませんでした。しかし、サルを食べたり、サルをペットとして飼育したりなどして接触するなかで、サルにいたウイルスがどんどんと変異していき、ヒトの突起と合致するウイルスが出てきてしまい、HIVが発生したと考えられています。

 インフルエンザの場合は、もともとカモやアヒルといった水鳥に感染するウイルスでした。水鳥をニワトリやブタと一緒に飼い、そこでヒトも一緒に住むなかで、まず水鳥からニワトリへ、そしてニワトリからブタへ、さらにブタからヒトに感染するようになったといわれています。インフルエンザウイルスも変化していく進化速度が速いので、例えばカモの突起に合致していたものがどんどんと変異していくうちに、ニワトリ、ブタ、そしてヒトへと感染するようになっていったわけです。つまり、非常に進化速度が速いなかで、いろんな生物とともに暮らしていたことから、ヒトに感染するようになったということです。

 エボラウイルスは、アフリカのコウモリの仲間が起源だといわれていますが、まだ決定的な証拠はありません。


●ウイルスは宿命的に発生している


 上の写真は、私が2003年にカンボジアの田舎に旅行した際のものですが、まさにブタとニワトリとカモが一緒に住んでいるところに、人間が住んでいるのが分かります。これを見た際に、私は「ああ、これがインフルエンザが始まった原風景なのだな」と感銘を受けました。人間はこのようにして暮らしてきたのです。それが良いか悪い...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治
“膝の痛みの名医”が語る(1)変形性膝関節症とは
膝の痛み…変形性膝関節症に有効なのは「運動療法」
黒澤尚
睡眠:体、脳、こころの接点(1)睡眠とは?
なぜ睡眠は生きるために必要?脳にある覚醒中枢と睡眠中枢
尾崎紀夫
ウイルスの話~その本質と特性(1)生物なのか、そうではないのか
きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」
長谷川眞理子
和食の深い秘密~なぜ身体に良いのか(1)和食の特徴と日本人
日本人は地球上最もベジタリアンだった?和食の7つの基本
小泉武夫
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治