テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

新型コロナにも可能性のある「ウイルス感染の再燃」とは

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(8)感染性の有無と持続感染の懸念

情報・テキスト
新型コロナウイルス対策のためには、感度の高い試薬が必要となる。現在、急ピッチで開発が進められているが、善玉抗体だけを見分ける試薬はまだ開発されていない。また、検査で陽性となっても、発症から一定期間経過した人から出るウイルスにはほぼ感染性がないことも分かってきた。ただし、持続感染の可能性もあるので、引き続き慎重に対応策を考えていく必要がある。(全11話中第8話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:07:13
収録日:2020/06/04
追加日:2020/07/02
≪全文≫

●高感度の試薬は開発されつつあるが、善玉抗体の有無の判定は難しい


曽根 2点ほど質問があります。1つは確認なのですが、ロシュ社の抗体検査の試薬はかなり感度が高いと報道されています。これらの試薬では、季節性インフルエンザの抗体とコロナウイルスの抗体の区別は可能という理解でよろしいのでしょうか。

宮坂 はい、その通りです。

曽根 ただし善玉、悪玉、役無しという抗体の区別はできないのですね。

宮坂 今の検査ではできません。

曽根 もう1つの質問です。プロ野球選手が抗体検査を受けて抗体を持っていることが分かったが、PCR検査を行うとウイルスを保持していることも分かったと報道されました。この関係はどのようなものなのでしょうか。抗体によってウイルスはほとんど排除されていて、その死骸を発見したのか、あるいは抗体を持っていても無症状の保持者と同じようにウイルスを保持しているという可能性もあるのでしょうか。

宮坂 順にお答えします。

 まず、抗体検査の測定キットの能力に関しては、前々回スライドで示しました。もし、スライドにある赤玉の抗原だけを精製して、そこに結合する抗体を探せば、中和抗体の有無の検査になります。一方、緑の丸や黄色の丸を用いても意味がありません。ですので、うまく赤い丸だけを精製することができれば、中和抗体を抗体検査で確認することは不可能ではありません。しかし、現在行われている検査の多くは、例えばスパイクたんぱく質を丸ごと用いる、あるいはスパイクたんぱく質の赤丸に近いと考えられる部分を用いて行いますが、その一部は実は他のコロナウイルスとよく似た配列なので、特異抗体も見つけられますが、同時に交差性の抗体とも反応してしまいます。

 これまでに、どの部分を選べば本当に正確に抗体が計測できるかという知識が蓄積されてきて、ロシュ社などが持っているキットは、他のコロナウイルスの抗体はほぼ検出せず、新型コロナウイルスだけを検出します。そのようなキットはたしかに出てきていますが、中和抗体だけを計測できるキットは、現段階ではまだありません。


●分かってきたウイルスの感染性変化の経過


宮坂 それから、プロ野球選手が抗体検査で陽性だったので、PCR検査を行うとこちらも陽性だったということがありました。球団の発表では、この人は以前に感染して、今回のPCR検査で陽性になっているのは、ウイルスの死骸に反応したのではないかといわれています。私もおそらく、その解釈は正しいだろうと思います。

 詳しく説明します。これまでも入院した患者さんに対して、毎日PCR検査を行ってきました。基本的に、ある時期まで症状が悪化して、それから快復してくるというような過程の中で、発症してから8日目前後までは常にPCR検査の結果は陽性です。さらに、検出されたウイルスを培養細胞にかけてみると、たしかに培養細胞を感染させるので、感染性のあるウイルスが出てきていることが分かります。

 ところが、8日目以降になると、PCR検査は陽性なのですが、検出されたウイルスを培養細胞にかけても、もう感染しないのです。つまり、ともかく感染して発症してから8日目以降に外に出てくるウイルスにはほぼ感染性はないというコンセンサスが、現在さまざまなグループの間で構築されつつあります。

 この結果を受けて、これまで厚生労働省は退院の基準として、PCR検査で2回連続の陰性判定を求めていましたが、その基準を撤廃しました。その理由は、今お話ししたように、発症してから一定日数経過してもPCR検査で陽性はあり得るものの、もう感染性のないウイルスなので問題ないという議論になるのです。


●懸念されるのは「持続感染」という現象


宮坂 ただ、一つここで懸念されるのは、「持続感染」という現象が他のウイルスでは報告されていることです。典型例としては、ヘルペスウイルスが挙げられます。私たちが年を取る、あるいは非常に強いストレスを受けた際に、ヘルペスウイルスの症状が出てくるのです。唇や顔の神経根に出てくることもありますし、私個人も脇腹に比較的ひどいヘルペスが出たことがあります。

 昔、感染したウイルスが体内の「神経根」と呼ばれる部分に、何十年も持続して住み込み生き続けています。そのウイルスが、免疫が弱った際に不意に表に出てくることがあるのです。こうした現象を「ウイルス感染の再燃」と呼びます。実は新型コロナウイルスに関しても、このような現象が起こる可能性があります。

 例えば、退院をしてPCR検査も陰性であった人が、後日またPCR検査したところ陽性反応が出たという事例があります。感染性のないウイルスが検出されたのか、それとも本当に感染性のあるウイルスが検出されたのか、まだきちんと区別できていま...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。