●行動様式の変容によって多くの活動が再開可能
―― 今までのご説明を受けた上で、今後の対応の指針についての説明を聞くと、よく理解できるように思いました。一般の市民の観点から関心があるのは、どこまで規制するべきなのかという点です。接触制限8割という数字は、かなりインパクトがあったと思います。しかし、今の先生のお話ですと、単純にはいいきれないものの、7割なくても効果が見られる可能性はあるとのことでした。あとは対人距離を取るなどの行動様式の変容を徹底することで、リスクを積極的に減少させることが重要だということですね。
宮坂 はい。もう一点、いい忘れていたこととして、このウイルスをどの程度吸い込むと感染するのかという点も重要です。これまでのデータから推測すると、おそらく数百個吸っても感染はせず、数千個から数万個吸ったときに感染が成立すると考えられます。この数字は、直接飛沫を浴びたときの数字に近いのです。ですので、お互いにマスクをして、さらに2メートル以上の距離を取れば、それほど多数のウイルスが直接相手に向かうことはないのです。
他の可能性としては、マスクの隙間から出て空気中に漂うエアロゾルが、非常に高い濃度になると、唯一感染する可能性があると思います。屋形船やライブハウスでの集団感染は、このメカニズムで起こっていた可能性があります。しかし、換気を徹底することで、エアロゾルの濃度は下げることができるのです。ですので、これも新しい行動様式の変容のうちの一つだと思いますので、やはりこれらを守ることが必要です。逆にいえば、それを徹底できれば、ライブハウスや屋形船、コンサートなどでも実行可能だと思うのですね。
したがって、本当に守らなければならない基準は、これから私たちが見つけていかなければなりません。あまりにも自粛を要求し過ぎると、不満ばかりたまり、あまり良い方向には向かいません。むしろ、少々間違いを起こすかもしれなくても、どこまで可能なのか試していくことが重要です。
先ほども指摘したように、感染者がいるとしても、東京ですら他人にうつす人の数は非常に少ないのです。対人距離を適切に保ち、マスクをしていれば、目の前に強い感染者がいても感染しないはずなのです。したがって、その点にもう少し自信を持って、活動を広げていくことが重要だと思います。もちろんあまりに甘くし過ぎるのは危険だとは思いますが、行動様式の変容に、いかに実現できるレベルで取り組むかということだと思います。
―― 現在は2020年6月上旬ですが、少し感染者数が増えてきただけで恐れてしまうという状況です。しかし、感染拡大の程度をきちんと理解して、正しく恐れて、正しく対策を取っていかなければならないということですね。
宮坂 そうですね。現在の感染者数の増減が示しているように、社会の中で感染者が消えているわけではありません。日によって、感染者が5人しか見つからなかった、30人、20人見つかった、という情報に一喜一憂しても意味がないのです。一見感染者数が増えたように見えても、実際に社会の中にどの程度の数の感染者がいるのか、という理解のほうが大事だと思います。
例えば、大阪などでは、最近の感染者は毎日ゼロなのですね。しかし、だれもその数字を本当のものだとは思っていません。私たちのような研究者は特にそうです。おそらく、東京ほどはいないにしても、その半数程度はいると思っています。ですので、必ず時間とともに感染者が出てきます。特にこれから、自粛規制が緩み、多くの人が通勤するようになると、必ずまた出てくると思います。社会は、これからしばらくの間は、ウイルスと共存するという認識を持たなければならないと思います。
●新型コロナの危険度は季節性インフルエンザよりもはるかに高い
―― ありがとうございました。曽根先生、ご質問はいかがでしょうか。
曽根 重要な問題は、正しく恐れるとはどういうことなのかということです。たしかにむやみに恐れる必要はないと思いますが、よく比較として季節性インフルエンザが持ち出されることがあります。新型コロナウイルスの死亡率は、季節性インフルエンザに比べてかなり高いと思います。おそらく数十倍ではないでしょうか。
宮坂 そうですね。現在の数字を見ると、そのように見えます。
曽根 この危険性をどの程度だと想定するのかという点が、一つ目の質問です。もう一つは、新型コロナウイルスを恐れる理由の一つとして、特に後期に肺以外の部位で血栓ができる、あるいはサイトカインストームが起きるという問題があります。こういった症状は季節性インフルエンザではないのでしょうか。以上2点、お伺いしたいと思います。
宮坂 そうなのです。まず、血栓の問題に関してですが、これはコロナウイルスの治療上...