免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える
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抗体ができても、病原体を殺す善玉抗体だけとは限らない
免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(6)抗体の種類とワクチン開発
コロナウイルス対策として抗体の重要性が叫ばれるようになったが、その実情はよく知られていない。抗体には実は、善玉抗体や悪玉抗体など複数あり、実際に感染拡大を抑えるものだけではなく、逆に感染を促進させてしまうものもある。それを見極めるためには、さまざまな実験を通じて、確かなデータを集める必要がある。拙速なワクチンの開発と実用化は、感染拡大を招く危険性があるため、避けなければいけない。(全11話中第6話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分46秒
収録日:2020年6月4日
追加日:2020年7月1日
≪全文≫

●抗体には善玉、悪玉、役無しの3種類がある


―― それでは、スライドの解説の続きをよろしくお願いいたします。

宮坂 次のパートでは、先ほど一部お話ししましたが、ウイルスと免疫に対する基本的知識の一つとして抗体がどの程度重要なのか、抗体が存在さえすれば体の抵抗性が決まるのか(答えは否ですが)、こちらの点についてご説明します。

 こちらのスライドでは、抗体が形成されたとしても、必ずしも病原体を殺す善玉抗体であるとは限らないということについてお話しします。

 抗体は善玉、悪玉、役無しの3種類に分類されます。定義としては、ウイルスを殺す、あるいは不活化する、働きを止めるなどの性質を持っている抗体のことを善玉抗体と呼びます。ウイルスの働きを中和するので、医学用語では「中和抗体」と呼びます。これに対して、ウイルスの感染性を強めてしまう、促進してしまう、すなわち病気を悪くする抗体が、悪玉抗体の定義です。役無しとは、今指摘した2つの機能のどちらも持っていないもののことを指します。スライド内の左下のほうに、丸の中に善玉、悪玉、役無しの3つの抗体がありますが、抗体というものはこのように3種類に分類できることを理解することが重要だと思います。


●抗体の増加は必ずしも感染拡大防止につながるわけではない


 その右の3つのグラフでは、感染前の抗体量と感染後の抗体量を比較しています。一番左のグラフにあるように、多くの場合はウイルス感染から回復した後に、善玉抗体(ピンク部分)が増えています。インフルエンザなどではこのような変化を観察することができます。

 ところが、真ん中のグラフに目を転じると、役無し抗体の増加が大部分を占めています。典型例はエイズです。ほとんどのエイズの感染者で見られますが、感染すると抗体量が急激に上がります。しかし、急増した抗体を見てみると、ウイルスには結合するものの、病気の働きを止めることも、あるいは進行させることもあまりしません。つまり、この場合には、抗体の形成は抵抗性の付与にはまったく関係がないわけで、役無しということになりますね。

 一番右側のグラフは、感染後に悪玉抗体が増加する例です。典型例として、ネコに感染するコロナウイルスが挙げられます。このウイルスがネコに強い消化器症状を起こすので、ペットの飼い主た...

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