●「免疫力が上がる」とは、どういうことか?
―― 基本的な質問をしてもよろしいでしょうか。漢方もそうですし、ビタミンDを飲んで、免疫力が上がるということは、分かりやすく言うと、どういうことなのですか? 入ってきたものを軽症化させるということなのですか?
堀江 応答が速くなる。だから、入ったって、すぐに排除してしまう。ウイルスをすぐになくしてしまう。
―― そうすると、見た目の症状でいうと、軽いか、症状がないかたちで、免疫ができてしまうということですね。
堀江 できてしまう。
―― そうなるのが、先生がおっしゃったように、一番良いわけですね。
堀江 ただ、難しいのは、新型コロナウイルスの場合は、まったく無症状だけれどもウイルスを出している人がいる。無症状の人たちはウイルスを排除するはずなのだけれども、一部分、ウイルスが体と共存してしまっている状態があり得る。そういう意味で、少し「賢い」ウイルスというか、普通は体をやっつけようとするわけです。それで人間の体がそれに応答して、熱を出したりして、(ウイルスを)やっつけるわけですね。インターフェロンが出ると熱が出るのですが、新型コロナウイルスの場合は、しばらくの間、一緒にいる期間が、どうもあるようだと。それから有効な抗体ができない人がいるということです。これが、メカニズムとしては、少しこれまでのウイルスと違うということですよね。
―― 症状が出ないで伝染ってしまうということは、つまり、そういうことなのですか。共存していて症状が出ない段階でも伝染ってしまうというのは、そういう特徴があると。
堀江 そうです。しかし、風邪もおそらくそうですよね。コロナウイルスというのは風邪のウイルスなので、もともとそういう性質を持っている可能性がある。
また、遺伝子の変異と言いますが、イタリアのものと武漢のものはまったく違うのです。ただし、違うことがどういう意味をもっているのかは、まだ分からないのです。
●ロックダウンの意味とは何か?
―― 今、日本で言われているロックダウンについてですが、国の対策の手法として、何をするのが日本にとっては良いことなのでしょうか。
堀江 公衆衛生対策は僕の専門ではないのですが、色々な考えがあると思います。きちんとした教育をしたうえで、可能なかぎりの検査をするというのが、1つの考えだと思います。検査をして陽性が分かった場合、日本では原則として、特殊感染症の場合、入院することが義務付けられています。例えば、野球選手が、症状はなくとも味覚がないことに気づき、陽性が明らかとなって、入院したというケースがありました。しかし本来であれば、こうした人には入院は必要ありません。家でキャッチボールをしていても良いのです。人に伝染さなければ。
そうしたあまり症状のない人が入院していたのも事実なのですね。ですから、「トリアージ」といいますが、誰を入院させるかということを考え、可能な病床を空けていくこと、そして法律の要件を弾力的にすること、これらが必要でしょう。
もちろんロックダウンをすれば、(感染のペースは)減っていきます。ただし、ロックダウンを止めれば、またある程度、増えていくでしょう。ロックダウンして感染者がいなくなるのではなくて、あくまでオーバーフローさせないための方法です。
―― そうすると、ブレーキをかけて、ある程度収まったら平常運転し、また増えてきたらブレーキをかけるということを、何回もやっていくのですね。
堀江 そうです。ただし、何回もロックダウンすると経済にとっては具合が悪いですよね。そのため、本当はどの程度感染者がいるのか、感染しても大多数の人は大丈夫なのか、大丈夫じゃない人はどのような人なのか、病院以外の中間施設は利用可能なのか、ということについて方法論を考える必要があります。中間施設については、ホテルなどを政府が借り上げて利用するという方法があります。こうしたことを考えていく必要があるでしょう。
日本は、現段階までは、感染者数や死亡者数が多くありませんでした。しかし亡くなっている人の数を見ると、感染者数は6千人~1万人以上いると思います。そうした感染状況を、どのような形で終息させていくのかを、見ていく必要があります。そうしないと、ものすごい犠牲を払っているアメリカやイタリアが終息を迎えている時期でも、日本ではまだ状況が続いているという状況もあり得ます。
●ウイルスの問題に向き合う時、どのような心構えが必要か
―― 最近よく議論されているのが、結局みんなが感染しないと終わらないのではないかということです。感染者数が増えたか減ったかという議論ではなく、そこをどのようにコントロールするかが、実は重要なのだという議論です。
堀江 その通りだと思...