●少数のスーパースプレッダーが感染を拡大させている
―― 宮坂先生、それでは次の新型コロナウイルス感染の流行への対処法に関して、説明をよろしくお願いいたします。
宮坂 ここまでの話をもとに、新型コロナウイルスの第2波、第3波が来るかもしれないという中、私たちはどのように対応すれば良いか、その点についてお話しします。
次のスライドは、北海道大学の西浦博先生のデータをそのままお借りしていますが、ここでは1人の感染者が何人の2次感染者を生み出すのか示しています。横軸は、1人の感染者が生み出した2次感染者数、縦軸はそのような人が何人いるか示しています。これを見ると、感染者の8割は他人に感染させていません。横軸が0の部分では、縦軸は8割程度の値を取っています。
一方、右側に目を向けると、1人の感染者が複数の人を感染させたという人たちがいますが、これらの人は全体の2割です。この中に、1人で9人や12人に感染させた事例があります。このように1人で多くの人に感染させる人は、「スーパースプレッダー」と呼ばれます。すると、10人中8人は他人に感染させないのでさほど心配はないわけです。問題はこの2割の人、特にスーパースプレッダーを見つけて隔離すれば、私たちの社会で感染は広がらないということになります。
次のスライドは、東北大学の押谷仁先生がつくった図を、私が一部改変しています。感染者が5人いたとすると、先ほどお話ししたように、感染者1~4までは他人に感染させません。感染者5のみが、1人で10人程度感染させる可能性を持っています。この場合、基本再生産数の計算を行うと、感染者1から4は0で、感染者5の1人で10人感染させるので、5で割るとR0は2となります。1人当たり平均して2人を感染させたということですが、実際には8割は他人に感染させませんでした。1人だけが10人感染させたのですが、平均値を取ると2人となってしまうのです。
ご指摘がありましたように、R0はそれほど信頼できる数字なのかというと、これは解釈の方法によるのですね。このような統計を見ても分かりますが、R0という指標は非常に移ろいやすい数字です。ただ、重要なポイントは、この赤い感染者5、すなわちスーパースプレッダーをあらかじめ見つける...