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「スーパースプレッダー」が分かれば、感染拡大の防止は可能

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(9)鍵は「スーパースプレッダー」

情報・テキスト
蓄積されてきたデータを分析すると、感染者の多くは他人に感染させておらず、少数の感染者が多くの人に感染させていることが分かってきた。1人で多くの人に感染させる人を「スーパースプレッダー」と呼ぶが、彼らを検知するために、迅速かつ容易に行うことができる抗原検査が役立つ可能性がある。今後もクラスター解析や濃厚接触者の確認などを通じて、スーパースプレッダーの存在を見つけていくことが、感染拡大を防ぐ第一の道である。(全11話中第9話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:16
収録日:2020/06/04
追加日:2020/07/02
≪全文≫

●少数のスーパースプレッダーが感染を拡大させている


―― 宮坂先生、それでは次の新型コロナウイルス感染の流行への対処法に関して、説明をよろしくお願いいたします。

宮坂 ここまでの話をもとに、新型コロナウイルスの第2波、第3波が来るかもしれないという中、私たちはどのように対応すれば良いか、その点についてお話しします。

 次のスライドは、北海道大学の西浦博先生のデータをそのままお借りしていますが、ここでは1人の感染者が何人の2次感染者を生み出すのか示しています。横軸は、1人の感染者が生み出した2次感染者数、縦軸はそのような人が何人いるか示しています。これを見ると、感染者の8割は他人に感染させていません。横軸が0の部分では、縦軸は8割程度の値を取っています。

 一方、右側に目を向けると、1人の感染者が複数の人を感染させたという人たちがいますが、これらの人は全体の2割です。この中に、1人で9人や12人に感染させた事例があります。このように1人で多くの人に感染させる人は、「スーパースプレッダー」と呼ばれます。すると、10人中8人は他人に感染させないのでさほど心配はないわけです。問題はこの2割の人、特にスーパースプレッダーを見つけて隔離すれば、私たちの社会で感染は広がらないということになります。

 次のスライドは、東北大学の押谷仁先生がつくった図を、私が一部改変しています。感染者が5人いたとすると、先ほどお話ししたように、感染者1~4までは他人に感染させません。感染者5のみが、1人で10人程度感染させる可能性を持っています。この場合、基本再生産数の計算を行うと、感染者1から4は0で、感染者5の1人で10人感染させるので、5で割るとR0は2となります。1人当たり平均して2人を感染させたということですが、実際には8割は他人に感染させませんでした。1人だけが10人感染させたのですが、平均値を取ると2人となってしまうのです。

 ご指摘がありましたように、R0はそれほど信頼できる数字なのかというと、これは解釈の方法によるのですね。このような統計を見ても分かりますが、R0という指標は非常に移ろいやすい数字です。ただ、重要なポイントは、この赤い感染者5、すなわちスーパースプレッダーをあらかじめ見つけることができれば、この人を入院させる、あるいは隔離するなどの対策によって、社会における感染拡大を防ぐことができます。


●抗原検査はスーパースプレッダーの同定に役立つ可能性がある


宮坂 では、スーパースプレッダーとはどういう人なのでしょうか。医学的に考えると、おそらく口や鼻から大量のウイルスを吐き出す人であるはずです。ですので、ウイルス粒子の存在を迅速に検出できるような診断キットが開発されれば、スーパースプレッダーの同定ができるかもしれません。実は、インフルエンザの迅速な診断キットは、このような仕組みになっています。抗原を検出するキットなので、新型コロナウイルスでもこのようなキットを用いれば、同様に対処できるだろうと、スライドの最後に書いています。

 次のスライドの図では、ウイルス粒子の存在を検出できる迅速抗原検査の開発がされつつあることを示しています。実際に今次々と出てきています。

 PCR検査より安価かつ迅速に、医療現場でウイルスの有無を確認できるようなキットです。唾液であれば、被験者が自分でサンプルを採取し、検査ステーションに持参して、その場で検査を受けることができます。すると、30分から1時間で結果が出てきます。

 原理を説明します。スライドグラスが3枚示してありますが、1番上のスライドグラスにはウイルスに特異的な、すなわちウイルスだけに反応するような抗体を、固定することに成功したとします。すなわち1番目では、あらかじめウイルスに対する抗体をプレート上に固相化する、すなわち固く固定するのです。その上にウイルスを含む液を振りかけると、ウイルスだけがその抗体に結合するはずです。それが真ん中の図です。

 この結合したウイルスを検出するために、先ほど使ったのと同じ抗体を液体の状態にしておいて、その抗体に、実際には目で見えるような色素をつけます(ここではピンクの目印)。これを上からかけると、ウイルスが存在する部分だけに、この標識抗体が結合するはずなのです。したがって、この黄色の網掛けの部分に書いてあるように、発色の有無によってウイルスの存在を確認できるのです。

 このような検査を用いると、感度はPCR検査ほどではないでしょうが、ウイルスを大量に放出している人は陽性になるので、一番下に書いてある通り、ウイルス排出量の多い人の同定...
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