スウェーデンは、強い自然免疫力を持つ人たちによる集団免疫の獲得を目指して生活への制限を極力行わない方針を取ったが、その代償として日本よりも多くの死者を出した。一方、日本は比較的緩い制限でとどめたが、良い結果を得ているのであればそれでも十分かもしれない。では、予防接種によって自然免疫が刺激された場合、どの程度効果が持続するのだろうか。これについては、BCGの集団接種を行っている国とそうでない国の違いや、その中でも地域差があるという。(全11話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫
●スウェーデンよりも日本のウイルス対策で十分なのか
―― 曽根先生、前回までのお話に関してご質問はありますでしょうか。
曽根 宮坂先生の非常に重要なメッセージは、スライドの8ページにあると思います。特に右側の図に関して、これまでは集団免疫を獲得するには獲得免疫を持つ人が6割必要だといわれてきたと思うのです。しかし、十分な自然免疫を持っている社会の構成員の比率は測定できているのでしょうか。これは現実には非常に難しい問題だと思いますが、例えば、十分な自然免疫を持つ人が4割、獲得免疫を持つ人が2割存在すれば、合計6割という数字になるのでしょうか。
もう一つは、前回までの話でご指摘があった通り、隔離によって基本再生産数を1.2まで下げることを目指すべきなのでしょうか。それとも自然免疫を高めれば、強く隔離をしなくても基本再生産数を1.2前後に保つことが可能なのでしょうか。こうしたことが分かるか分からないかによって、今後取るべき対策は大きく変わってくるかと思います。
宮坂 そうですね。ご指摘の点をどう考えるかで今後の対策が変わってくると思います。
曽根 この点に関して、お教えいただけますか。
宮坂 ご指摘のように、新しい考え方では集団免疫を考える際には、抗体による免疫だけが全てではありません。自然免疫も重要だとすれば、自然免疫は集団免疫の形成に全体としてどの程度貢献するのか、という点はよく分かっていません。
しかし、私の考えでは、集団の10パーセントから20パーセントの人たちは、かなり強い自然免疫を持っており、よほど大量のウイルスにさらされない限り感染しません。つまり、比較的抵抗性のある集団が、10パーセントから20パーセント程度いるのではないかと思っています。感染がこのまま拡大していけば、そのような強い自然免疫を持った人たちだけが残っていく可能性があります。その場合、徐々にウイルスが感染しにくい集団が選択されていくことになるわけですね。
しかし、その場合には感染した人が、高いスピードで亡くなるという仮定が必要です。例えば、スウェーデンはこの方針を取り、亡くなる方は仕方がないものとして、生き延びる人たちの中で抗体を持つ集団を増やそうとしています。あと1年から2年持ちこたえれば、効果が出てくるかもしれません。
しかし、100万...