テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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まず「病原体を防ぐからだのメカニズム」を知ることが重要

免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(1)自然免疫と獲得免疫

情報・テキスト
新型コロナウイルスは私たちの生活に大きな影響を与えているが、これから社会をどう平常化していけばいいのか、「免疫」という視点から考えるシリーズ講義。まず私たちのからだは、「自然免疫と獲得免疫」という二段構えの免疫機構が備わっていることを押さえておくことが重要だ。この免疫機構の働きを正しく理解することが、ポストコロナの社会を生きていくために重要である。(全11話中第1話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:40
収録日:2020/06/04
追加日:2020/07/01
≪全文≫

●私たちの免疫機構は自然免疫と獲得免疫の二段構えになっている


―― 皆さま、こんにちは。本日は、大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授、兼大阪大学名誉教授の宮坂昌之先生、およびテンミニッツTV副座長を務めている慶應義塾大学名誉教授の曽根泰教先生に、「新型コロナウイルスと免疫」というテーマのもと、これから社会をどう平常化していくか、ということに関してお話を伺いたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

宮坂 よろしくお願いします。

―― 本日、宮坂先生に資料を準備していただいたので、この資料で説明を加えたのちに、曽根先生と議論を深めていただきます。それでは宮坂先生、どうぞよろしくお願いいたします。

宮坂 それではご説明させていただきます。最初に、ウイルスと免疫に関する基本知識について、お互いの理解を共有することが望ましいと思いますので、その1として個人レベルでの免疫反応からお話しさせていただきます。

 上のスライドにあるように、私たちの免疫機構は二段構えになっています。まず、自然免疫という、お城でいえば城門、城壁のようなものがあります。それから、獲得免疫とは、いわば免疫の本丸、最も大事な部分です。この図の上のほうが体の外、下のほうが体の中と考えてください。スライドにあるように、病原体が体の中に侵入しようとした際の、最初のバリアーは「物理的・化学的バリアー」と呼ばれます。例えば、皮膚や粘膜、そこに存在する殺菌物質などが細菌やウイルスの侵入を防ごうとするのです。

 この層を通り抜けると、次の層には白血球の一種である食細胞がいます。これは、ばい菌やウイルスなどの入ってきた病原体を食べて、多くのものはその細胞の中でつくった殺菌性物質によってそれらを殺してしまうのです。この機構を「自然免疫機構」と呼びます。スライドの右側にあるように非常に反応が速く、数分から時間という単位で働きます。ただし、一度見たものを覚えていないと、これまでいわれていました。これは必ずしも正しくないのですが、教科書にはこのシステムは免疫記憶を持たず、前に見たものを覚えていないと書かれています。この機構の大事な点は、生まれたときから誰でも持っているということです。

 次に、この自然免疫機構をウイルスが通り抜けると、さらにその内側には本丸である獲得免疫機構が待っています。具体的には、自然免疫を突破した病原体に対して、白血球の中でも特にリンパ球という細胞が抗体やキラーT細胞をつくるなどの反応をして、ウイルスを攻撃します。スライドにあるように、最初に「ヘルパーTリンパ球」と呼ばれる細胞の活性化をすることが重要で、これが免疫の司令塔となって他の細胞を助けます。

 例えば、Bリンパ球に働きかけると、Bリンパ球は抗体をつくります。キラーTリンパ球に働きかけると、キラーTリンパ球はウイルスに感染している細胞を見つけ出して殺します。この機構は「獲得免疫機構」と呼ばれます。反応が起こるまでに数日かかるので、最初にウイルスが入ってきた際には、どうしても病気が起こってしまいます。その病気が重症化するタイミングで、この働きが始まるので病気が収まるのです。ただし、2度目以降はこの機構がすでに準備して待っているために、2度目の病気は通常起こらないということになっています。

 このシステムの大事な点は、反応は遅いものの免疫記憶を持つこと、そしてこのシステムは生後発達するということです。特に感染によって発達していきます。この二つの機構、すなわち自然免疫と獲得免疫を合わせて、体の免疫、抵抗力ということになります。


●4種類の細胞全てが働かなければ、完全なウイルスの排除には至らない


 次のスライドでは、感染あるいはワクチン接種により、自然免疫と獲得免疫が刺激され、抗体とヘルパーT細胞、キラーT細胞ができることを示しています。人に向かう矢印にあるように、ウイルスの感染が起こる、あるいはワクチンを接種すると、自然免疫が活性化されて、先ほどお話ししたように食細胞がウイルスを殺します。この部分はしばしば無視されているのですが、実は生体にとってはこの反応は非常に重要です。次に、自然免疫がうまく活性化されると、獲得免疫が動き出します。ヘルパーT細胞が活性化すると、Bリンパ球を助け、Bリンパ球は抗体を産出し、その抗体でウイルスを殺します。また、キラーT細胞を刺激すると、キラーT細胞はウイルス感染細胞を殺します。

 新型コロナウイルスの場合には、ウイルスの多くが細胞の中に入り込んで増殖した結果、さまざまな症状が出てきます。抗体でいくら細胞の外のウイルスを殺しても、細胞の中にウイルスが多く残っているので、...
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