心と感情の進化
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
脳科学的に大人は30歳!? 脳の奥にある人間の特色
心と感情の進化(2)「知情意」と脳の関係
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
日本には昔から「知情意」という言葉があり、知にあたる認知・認識だけではなく、情にあたる感情・情動や、意にあたる意志も尊重される文化が育まれてきた。このことは、現代の脳科学によって感覚器と脳の関係、脳の構造が明らかになってきていることで重みを増す。フィニアス・ゲイジの事例や脳の仕組みを取り上げながら、感情と脳の関係について考えていく。(全3話中第2話)
時間:13分47秒
収録日:2022年4月21日
追加日:2022年8月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●「知情意」とパスカルのことば


 日本では、認知科学などが発達するよりずっと前の昔から「知情意」というような言い方をしていました。

「知」というのはおそらく認知・認識のことで、頭で考えることとか、分かって理性で行うことという感じで、道筋をつけて理解をし、言語化すなわち言葉で言えるようにすること。これが「知」ではないかと。

「情」というのは、感情・情動のことでしょう。好き・嫌いとか、「~ような感じがする」とか、気分やムードとか、快・不快など、はっきり言語化されないことが多いのですが、何か分かっているということです。

 それに対して「意」というのは、私もよく分からなかったのですが、これは意志でしょう。良いことか悪いことかという倫理的・道徳的な判断も含めて、動機づけによってこれをするのだと決める意志が「意」で、古くからいわれている日本の「知情意」というのは、そういうことのようです。

 そうすると、今の脳の働きの研究などからすると、「知」と「情」が合わさって、ある種の判断で行うことが「意」で、(言い換えると)「知」と「情」を混ぜ合わせ、プラス動機付けで、「これをしてはいけない」というような価値観も含めたものが「意」なのでしょう。

 日本人が、昔からこのように「知情意」を分けて考えていたということ、(そのうちの)どれかがいいというわけではなかったというのは素晴らしいことだと思います。欧米のように、言語で何でも表して説得していく文化では「知」の部分が大きく持ち上げられます。たしかに「知」は大事ですが、「情」や「意」の部分も非常に大事です。三つを同じように表現して、同等に重みづけする考えは結構なことだし、本当にそうだと思います。

『パンセ』を書いたブレ―ズ・パスカルが面白いことを言っています。「心は理性のあずかり知らぬ理由を持つ」ということです。ここでは“heart”と“reason”が分けてあって、“heart”が「情」、“reason”が理性だから「知」でしょう。その“heart”には“own reason”があって“which reason does not know”、「心には理性が分からない理由がある」ということを書いています。やはり「情」の部分と考えていることにはズレがあり、必ずしも「知」が勝つわけでもないということを、パスカルは分かっていたようです。


●感覚を受け取るリセプター...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓