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イヌは世界をどう認識しているのか?

もっと知りたいイヌのこと(2)イヌの知性に迫る

長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
情報・テキスト
『人、イヌと暮らすー進化、愛情、社会』(長谷川 眞理子著、世界思想社)
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人間のパートナーとして進化してきたイヌの知性について、われわれはどこまで知っているだろうか。まず、その世界認識は嗅覚に始まるが、身体や顔の構造上、制限される能力も多い。「しつけ」の途中で感じる「イヌは人間の言葉がわかっているの?」という疑問は、どこまで解明されているのだろうか。(全3話中第2話)
時間:12:21
収録日:2023/03/29
追加日:2023/06/19
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●イヌの世界認識は「嗅覚」に始まる


 さて、イヌは何より嗅覚だといわれます。嗅覚ではあるけれど、人間よりもそれほどすごいわけではないらしいです。これは、人間の嗅覚が結構すごいということです。ではなぜ警察犬などにイヌを使うのかというと、かれらは4本足、つまり四つ足で歩く。体高が低くて、地面の近くを嗅ぎ回るので、(成果を)あげられるのです。

 人間も四つん這いになって同じようにすると、結構嗅ぎ分けもできるし、追跡もできるのだそうです。ただ、人間はそういう歩き方をしないので、イヌを使っているという感じだそうです。とはいえイヌが嗅覚主体の動物だというのは、その通りです。人間は霊長類、猿なので、視覚が主体の動物です。

 ですので、イヌはすべて嗅覚をもとにいろいろな認識をするけれども、人間は視覚をもとに認識するというふうに、感覚のモードが全然違う。ときどき、うちのイヌが一体何を考えているのかよく分からなくなるのは、主流となる感覚モードの違いがあるのかもしれません。

 イヌは視覚もいいのですが、暗さや明るさに関するところが人より感度が悪く、あまり明るいとよく見えないようです。なので、昼間ギラギラのところで散歩して家に帰ってきて暗くなると、結構見えにくいようです。イヌとヒトでは、そのような視覚の違いもあるので、同じように見ているわけではないようです。

 さらに触覚についても、口の触覚や手足の裏のほうの触覚など、いろいろありますが、私の観察によると、これも人間とは違っているようです。

 人間は二本足で歩き、足の裏ですべてを支えて、体をいろいろな角度に動かすことができます。それから、口が引っ込んでいる。鼻が一番高くて口は引っ込んでいるのですが、イヌはそうはなっていません。だから、イヌには自分自身の体の全体像は、なかなか見えづらいわけです。

 人間は後ろも見られるし、自分の足の裏も見られる。そういう感覚が、「自分とは何か」ということにも関係するのですが、イヌはそれがだいぶ制限されているように思います。


●イヌの知能と個性とは?


 イヌの知能や個性というのも、さすがに3頭飼うとよく分かります。記憶は非常にいいです。何かの物体とある現象が起こった関係を結びつけて学習することは、とても早くて得意です。

 たとえばうちのキクマルは、私たちが海外旅行に行くときに必ずスーツケースを出すのを見ているので、「スーツケースが出ると、お父さんお母さんはしばらくいなくなる」というのがすぐ分かる。そのため、スーツケースを見るだけで「いやだ」と感じて、グダッとなっていました。

 しかし、このことは「因果関係の理解」とは言えません。「Aがあると、Bになる」という原因と結果の関係を理解するのは人間だけだと思います。しかし、AとBが固く結びついているということを連合で学習することについては、イヌは優れていると思います。嫌なことは、一発で覚えます。

 ですので、キクマルは、どういうことが起こったのかを見覚えていないし、見てもいないのですが、自転車に乗ったお巡りさんが大嫌いでした。これは多分小さいときに、自転車に乗ったお巡りさんが目の前をビュッと通った。そのときに嫌だと思ったことが多分1回だけあった。その1回だけで覚えているので、お巡りさん一般までは覚えないものの、「自転車に乗ったお巡りさん」だけを覚えました。何が好きか、何をしたいのか、何が嬉しいのかということへの個体差はすごいと思います。

 男の子と女の子(オスとメス)の違いも結構あります。しかし、それが個体ごとの個性の違いなのか、オスとメスの違いなのかについては、もっとメスをたくさん飼わないと分かりません。

 でも、どちらも男の子であるキクマルもコギクも、キャッチボールが得意でした。寝ているところへ、急に(ボールを)投げても取れるぐらいでしたが、女の子のマギーは、全然取れません。「ボール、投げるよ」「投げるよ」と言ってから投げてもポカンとしていてぶつかったりもする。どうも、なにか動体視力のようなところか、(動いている)ものに対する感性が違うように思います。


●イヌと愛着形成


 「イヌと愛着形成」というのは、ヒトがどうしてイヌと仲良しになるのかという話ですが、これは「目を見つめ合う」ことです。人間の場合、赤ちゃんとお母さんや友達同士でも、お互いに目を見つめあうことでオキシトシンというホルモンが出て、非常に愛着が湧きます。ヒトとイヌが見つめ合うと、ヒトとイヌの両方にオキシトシンが出て、双方に愛着が強まる、という研究結果があります。

 これはキ...
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