『孫子』を読む:勢篇
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
孫子の「五声の変、五色の変、五味の変」に込められた意味
『孫子』を読む:勢篇(2)勢いの基本「奇正の変」
田口佳史(東洋思想研究家)
五声の変、五色の変、五味の変という言葉がある。いずれも「根本は5つでも、その組み合わせは無限にある」という意味だ。原理原則は何千年も前から変わることはないが、物事は常に変化する。それに対応できる能力があれば、どのような戦いにも勝つことができる。今回は勢いの基本である「奇正の変」の重要性を説く。(全3話中第2話)
時間:11分11秒
収録日:2020年2月25日
追加日:2021年1月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●「奇をもって勝つ」とはバリエーションを繰り出して勝つこと


 次のところは、奇正について解説をしています。「凡そ戦は正を以て合ひ、奇を以て勝つ」というように、戦いというのはどんなものでも、スポーツにしても、実際の戦争にしても、やはり対陣して、そして戦闘となってからは、バリエーション、いろんな仕組みがあるわけです。そういう意味で、正をもって合うとなります。しかし、正をもって勝つということは滅多にありません。奇をもって勝つ、バリエーションを繰り出して勝つんだと言っているのです。

 さらに「故に善く奇を出す者は、窮まり無きこと天地の如く」ですが、つまりバリエーションというものは、いろいろなものをたくさん持っていたほうがいいということです。これは野球であろうと、ラグビーであろうと、いろいろな手をしっかり持っているほうがバリエーションがありますから、敵の不意を突いたりすることもできますので、そういう意味でバリエーションがなければいけないのです。

 それは「窮まり無きこと天地の如く、竭<つ>きざること江河の如し」です。要するに、最近相撲などでも、小兵の小さな体の力士が大きな体の力士に勝つことで注目されていますが、最初、立ち合う前はとんでもないところから2人が戦うわけではなく、仕切り線に沿って立ち上がるわけです。しかしそのあとは、バリエーションなくして小兵は大きな力士に勝てません。あれが非常に重要です。

 そのときに、2、3度やると手が尽きてしまって、相手も必ずこう来るのではないかと思うようなところを攻めるというのでは勝てませんから、とんでもないところへ、次から次へと、「技のデパート」などといわれるくらいに、いろんな技が繰り出せないとためだというのは、これこそ戦いのセオリーなのです。これは何でもそうであり、歌謡曲の作曲家だってそうですし、いろいろな手がなければすぐ尽きてしまいます。小説家だってそうです。

 この世のものというのは全て、「窮まり無きこと天地の如く、竭きざること江河の如し」であって、よくまあ、どんどん新しいネタが考えられますね、というのではなくては駄目なのです。


●基本は5つでもバリエーションは無限にある


 「終りて復た始まるは、日月是なり」は、もう終わりかなと思うと、ま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子