『孫子』を読む:勢篇
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
乱戦で渾沌とした中、どうすれば冷静な判断力は保てるのか
『孫子』を読む:勢篇(3)冷静な判断力と組織の勢い
田口佳史(東洋思想研究家)
混乱を極めているときこそ、いかに冷静にその状況を把握できるかは、名将にとって欠かせない要素である。そして混迷から脱して成功を手にするには、一気に突き進む勇気がなければならない。外は沈着冷静で中は熱くたぎる勇気を併せ持てば、すでに戦いを前にして勝利しているようなものだ。勢篇の最終回は、「勢い」をどのように蓄えて生かすことができるのか、その本質に迫る。(全3話中第3話)
時間:12分31秒
収録日:2020年2月25日
追加日:2021年1月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●乱戦の中でも冷静な判断力はどうすれば保てるか


 その次は、「紛紛紜紜<うんうん>として闘ひ亂<みだ>れて、亂す可からず」です。紛紛紜紜というのは、まず紛紛は「紛紛として」という言葉がありますが、要するに紛れるようなという意味で、紜紜は物が多く乱れているということを表しています。言ってみれば、戦場は乱れに乱れて、奇生の変がもっと乱れた状態であり、「闘ひ亂れて」いるというように一見なっていますが、「亂す可からず」なのです。これはすごく重要なことです。要するに、乱れるくらいにバリエーションを徹底して繰り出しているのですが、どこかシーンと冷静になって己を見ているところがなければ、己も乱されてしまうということです。

 ですから、「亂す可からず」で、乱してはいけないというところがあるのが、戦いには非常に重要です。特にリーダーは、敵味方、相まみえて乱闘になっているときに大切です。乱闘になっていてもそのチームの長である人間は、その渦中にあったとしても冷静にきちんと周りを見て、クールな判断力を維持しなければいけないということを言っているわけです。

 そして「渾渾沌沌」ですが、これは渾沌ということです。渾はどっと水が流れることで、沌はぐるぐる水が回っていることです。それから「形圓にして、敗る可からず」ですが、これは、くるくる回っているけれども、それがパーッとやぶれる、要するに八方に散った瞬間に円は乱れて、保たれなくなりますから、それは駄目だと。ですから、故意に円を描いて、敵を翻弄するということです。

 したがって、こちらも乱れるくらいに一緒になって乱れるというような部分が、戦いのときはなければいけないが、心底から乱れては駄目だということです。非常に冷静さを保持できて、頭の中はクールになっている。けれども状態は乱れている。ということが重要だということをいっているので、これはすごく重要なことです。つまり、自軍の現在の状況を客観的に冷静に見て取れているリーダーがいるかどうかが重要だといっているのです。


●慎重の裏側には強く怯まず動じない中身がなければならない


 それから次の「亂は治より生じ、怯<きょう>は勇より生じ、弱は彊<きょう>より生ず」です。つまり、外側の乱れというのは、内側が治まって...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
プラトンの哲学を読む(1)対話篇という形式の哲学
ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ
納富信留
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
メソポタミア神話の基本を知る(1)メソポタミア神話の神々と人間との関係
メソポタミア神話は、ギリシア神話はじめ世界の神話の原点
鎌田東二
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(2)教義の宗教と覚りの宗教
キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
橋爪大三郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
デカルトの存在論に学ぶ(1) 「我思う、ゆえに我在り」
「我思う、ゆえに我在り」はデカルトの専売特許ではない
津崎良典
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(6)不在因果の問題
不作為(◯◯しなかったこと)の原因は無限に拡散する
一ノ瀬正樹
資本主義の再定義…哲学で考える(6)「学ぶ」ことの本質と道徳の問題
「一人で悟るのは危険だ」…学ぶことの本質と日本の役割とは?
中島隆博
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉