『孫子』を読む:勢篇
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「勢い」を考える上で鍵となる「分数・形名・奇正・虚実」
『孫子』を読む:勢篇(1)戦いにおける4つの要素
田口佳史(東洋思想研究家)
「形篇」と「勢篇」を合わせると形勢逆転の「形勢」となるが、これは、ただ軍隊がいるだけでは駄目で、そこに「勢い」というものがなければいけないということをいっているのである。では「勢い」において重要な要素は何か。孫子は「分数・形名・奇正・虚実」の4つを挙げている。それぞれどのような意味を表わしているのか。(全3話中第1話)
時間:8分31秒
収録日:2020年2月25日
追加日:2020年12月30日
カテゴリー:
≪全文≫

●どんな戦いにおいても「勢い」がなければ駄目である


 次の「勢篇」です。前シリーズの「形篇」と今シリーズの「勢篇」で「形勢篇」、つまり形勢逆転の形勢です。要するに、ただ軍隊がいるだけでは駄目で、そこに「勢い」というものがなければいけないということを言っているわけです。

 私は若い頃、2000社余りの会社の立て直しを担当してきました。それだけの数の企業を担当してくると、何か分かってくるところがあります。例えば、その会社の玄関をパッと入っただけで、これは相当手強い相手だということが分かる場合もありますし、いや、ここは脈がまだあるということが分かることもある。これは要するに、勢いを感じるかどうかということです。特に生産現場など工場へ行ってみると、それは非常に端的に表れていました。

 工場があれば必ず見学に行くのですが、何月何日の何時に工場へ伺いますと言っておいて、あとで伺います。それで、工場には守衛さんがだいたいいますから、門のところにいる守衛さんに「ごめんください。こういう者ですが」と言っても、そのような人が訪ねてくるのも分からないとか、今日聞いたというようなことや、「ちょっとお待ちください」などと言って、あっちへ問い合わせたり、こっちへ問い合わせたりしているような準備の悪い会社は、「ああ、これは相当駄目な会社になっているな」と分かります。

 いい会社はそうではなくて、もう担当者がその守衛さんのところの横に立ってじっと待っていて、そこに行くと「おはようございます」などと言います。このような会社はやはり脈があるということです。そのちょっとしたところに、その会社の勢いが出ます。そして工場の中に入ると、行き交う人の歩く勢い、人間としての勢い、このようなものが全然違うのです。

 ですから、勢いということは重要なのです。その勢いについて孫子が語っているのが「勢篇」です。では、そこを読んでみましょう。


●分数と形名―少人数でてきぱきと動くために意識すること


 まず「孫子曰く、凡そ衆を治むること寡<か>を治むるが如くするは、分數是なり」です。これは名言です。要するに、慣れない人は5人くらいならばなんとか束ねていくことができても、それが10人、20人になるとどうやって束ねていいか分からないものです。

 典型例が小学校の教員になりた...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化
日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化
田口佳史
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIは間違いが分からない…思考で大事なのは訂正可能性
中島隆博
歌舞伎はスゴイ(4)歌舞伎のサバイバル術(後編)
江戸時代の歌舞伎にも大波乱が…どうやって生き残ったか
堀口茉純
「進化」への誤解…本当は何か?(6)木村資生の中立説
欧州では不人気…木村資生の中立説とダーウィンとの違い
長谷川眞理子
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
株価と歴史…トランプ関税の影響を読む(2)株価リターンの歴史から考える
株式リターンの歴史検証…大きな構造変化の影響を見抜く
養田功一郎
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝