ギリシア神話の基本を知る
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ヘシオドスの『労働と日々』で描かれた「5つの時代」とは
ギリシア神話の基本を知る(2) 5つの時代と歴史観
鎌田東二(京都大学名誉教授)
ギリシア神話では大地が誕生したのちの人間の誕生を、どのようなストーリーで語っているのだろうか。有名なヘシオドスは時代を5つに分け、次第に状況が悪化していく叙事詩を描いた。そしてこれは日本の神話には見られない傾向であった。ギリシア神話で人間の歴史的な展開を追いながら、日本神話との違いも触れていく。(全5話中2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分10秒
収録日:2022年3月29日
追加日:2022年8月25日
≪全文≫

●5つの時代とヘシオドスの『労働と日々』という叙事詩


鎌田 今、神々の世代交代の話をしました。そこで興味深いのは、神々が生んだ人間の世界の歴史的な展開を、5つの時代に分けて話しているものがあることです。ヘシオドスの『労働と日々』という叙事詩です。その中では、第1時代は黄金の時代、第2時代が銀(白銀)の時代、第3時代が銅(青銅)の時代、第4時代が英雄の時代、第5時代が鉄の時代だといいます。

 これはいろいろな形で語られるのですが、最初の黄金の時代がなかなか興味深く、エデンの園のような話なのです。

―― あの『旧約聖書』でいうところの、ですね。

鎌田 『旧約聖書』でいうエデンの園のような話なので、人間がどうやって作られたかというものです。

 世界の神話構造の中には、宇宙がどのようにして始まったのか、人間がどのようにして始まったのか、文化がどのようにして始まったのか、といった起源論が語られています。その中で人間の始まりは、大地から種が成長して花になるように生まれてきたといった植物学的な生成があり、神々が創造したという話があり、神々の中でも特に火を用いた神が人間のために火を持ってきて創ったなど、さまざまな説があります。

 そういった中でヘシオドスが書いているのは、最初の黄金の時代は大変楽しい楽園の時代であったということです。一種のユートピアの状態で、季節がいつも春で暖かく、食べ物も地上に満ちていて、人間は働かなくても過ごすことができる。まさにエデンの園です。

―― エデンの園ですね。

鎌田 木の実を取って、どこでも食べていいということです。エデンの園でも最初は、生命の木の実がエデンの園の中央にありました。そして、その生命の木の実を取って食べたら、おそらく永遠の生命になる。これは世界共通の、神の世界は不死の世界だという考え方と、人間の世界には死があるという考え方です。死というものが黄金の時代にもあった。だから、そこは神とは大きく違う時代なのです。それが次第に劣化していき、銀の世界となり、銅の世界になっていく。そしてだんだんと争い事が増えてくる。

―― 単なる楽園ではなくなってくるのですね。

鎌田 そうです。そして、例えば青銅の時代(ブロンズエイジ)になると、銅剣のようなものが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
『「甘え」の構造』と現代日本(2)日本人の自責意識と自由の限界
「Thank you」か「I am sorry」か…日本人の癖とは?
與那覇潤
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生