世界神話の中の古事記・日本書紀
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
藤原氏は『古事記』をサポートする家だったのではないか
世界神話の中の古事記・日本書紀(7)国家の正統性はどこにあるのか
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『古事記』と『日本書紀』の違いの1つは、国譲りの記述にあると鎌田氏は言う。『古事記』では国譲りで壮大な物語が描かれ、『日本書紀』では非常にあっさりとした記述に留まる。その理由はいったい何だろうか。一国の歴史を考えるときには、文献も大事だが、いわゆる伝承として残っているもので考えることも大事だ。神社にまつわる物語に注目すると、国の正統性がどこにあるのかが見えてくる。(全9話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分12秒
収録日:2020年10月5日
追加日:2021年5月19日
≪全文≫

●『古事記』になく『日本書紀』にある伝承


―― 基本的に『日本書紀』の場合はカットだけなのですか。『日本書紀』には「一書に曰く」といったいろいろな表記があるということですが、『古事記』の出雲神話の部分はカットされるとともに、他に入ってくる要素はあるのでしょうか。

鎌田 『古事記』になくて、『日本書紀』にのみある伝承もあります。『古事記』とは一つの家の立場を膨らませて、面白く物語化したという側面があります。対して『日本書紀』は、できるだけ公平に、バランス良く、いろいろな家々の伝承を取り込んでいる。

 そういった中で、『古事記』にはない非常に重要な伝承は、国づくりは基本的にオオクニヌシがスクナヒコナノカミと行ったというものです。そのスクナヒコナノカミが常世の国へ去っていった。ここまで、『日本書紀』では「一書に曰く」の中に同じような内容が語れています。

 そのときに、亡くなって落胆しているオオナムチノカミ(オオナムチ=オオクニヌシ)の前に、海上に光り輝く神秘的なものが現れる。スクナヒコナノカミのいない喪失感を抱えているオオナムチを前に、その光るものが「我はおまえの幸魂・奇魂(さきみたま・くしみたま)」と言うわけです。

―― 幸魂・奇魂はどのような意味なのですか。

鎌田 幸魂・奇魂とは、「さき」は幸福の幸、「くし」は奇妙の奇です。つまり、非常に不思議な、怪しい、神秘的な、そして豊かな力をもたらす御霊の働きということです。荒魂・和魂(あらみたま・にぎみたま)という言い方は、それ以前からいろいろな形でありました。

―― これは「荒々しさ」と「平和的なもの」ですね。

鎌田 恵みをもたらす平和的なものと、破壊的なものです。スサノオは両方を極端に持っていますね。荒魂と、そして和歌を詠うような賑々しいものを持っている。

 例えば出雲の場合、国づくりをして豊かになるわけです。国づくりで多様なものを生み出す神秘力を持っているからです。『古事記』では、その国譲りの具体的なディテールを語ることになります。

『日本書紀』の場合は、それを「幸魂・奇魂が現れた」という形で、それを「大和の三諸の山(三輪山)に祀れ」と言う。そして大和に祀り、それを宮中の皇室の守護神のような役割に位置づけていく。

 つまり出雲的なものが、天から下りてくるアマテラスオオミカミ(アマテラス)の子孫と...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫