宇宙探査の現在と可能性
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イオンエンジンが抱える2つの大きな問題
宇宙探査の現在と可能性(7)大電力電気推進-1
小泉宏之(東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)
一見効率的に見えるイオンエンジンだが、推力が非常に小さいため、火星到達には非常に長い年月を必要とするという問題がある。しかしこの問題は、なぜ生じてしまうのだろうか。その原因は、イオンエンジンの仕組みにあった。(全10話中第7話)
時間:10分15秒
収録日:2019年6月11日
追加日:2019年7月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●イオンエンジンの1つ目の問題は長時間加速のデメリット


 イオンエンジンを使うと排出速度が非常に大きいので、総質量が激減しそうに思えますが、実はその点に関して大きな問題が2つあります。今回はこのことについて説明したいと思います。

 1つ目は、イオンエンジンならではの問題である、長時間加速のデメリットです。逆にいえば、これは短時間加速にはメリットがあるということです。最初にお話しした、地球を出発するケースを改めて参照しましょう。例えば、地球を出発するとき、地球の周回軌道からプラス3.2キロメートル毎秒の速さを得られると、無限遠で速さは0になります。

 ここから3.6キロメートル毎秒にすると、無限遠で2.9キロメートル毎秒になります。先ほどこのことを簡単にお話ししたのですが、実は少し不思議なような気もします。なぜなら3.2から3.6では、0.4しか増えていません。しかしながら、一番遠くに行ったときの速さは0が2.9になっているからです。つまり、非常にお得なことが起きているのです。仮に最初の3.2キロメートル毎秒のまま地球を脱出し、無限遠で0になってから、再びそこで加速してプラス2.9キロメートル毎秒した場合、トータルの速度としては6キロメートル毎秒ほどが必要とされます。

 ですが、こちらの地球加速を増やす方法だと、プラス3.6キロメートル毎秒にするだけで無限遠方において2.9という値を得られます。つまり、地球のそばで加速すると、非常にお得だということです。てこの原理のようなもので、地球のそばを通っているときは非常に速度が速いので、そのときに同じ力で押すと、ますます加速されるということです。逆に、先ほどお話ししたように、無限遠に行ってから加速する場合、無限遠まで推進剤を持っていかなければならないので、非常に効率が悪いのです。

 一般的に、重力の強いところで加速した方がお得であるというのが、軌道のルールです。しかし、電気推進の場合、これをうまく使えません。


●電気推進機は力が非常に弱い


 電気推進機は、実は力が非常に弱いのです。そのため、この装置は加速が非常にゆっくりです。そのため、先ほど説明したような軌道、すなわち円をいきなり楕円にすることができ...

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