宇宙探査の現在と可能性
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
火星探査はどのような形で行うのかを考える
宇宙探査の現在と可能性(2)ロケットと軌道の基礎-2
小泉宏之(東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)
火星探査を考えた場合、探査機が地球から離れ火星に近づくためには適切に速度を増減させていく必要がある。加速させることで探査機の軌道は地球を離れ、減速させることで衝突せずに火星に接近できる。こうした加減速を考えると、地球から火星への往復には、宇宙空間上で約8キロメートル毎秒の速度増分が必要である。(全10話中第2話)
時間:8分13秒
収録日:2019年6月11日
追加日:2019年7月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●探査機に速度変化を与えて、地球の軌道から離れさせる


 それでは、具体的にどのような形で火星探査を行うのかを、地球の近傍から出発して見ていきたいと思います。まず、高度200キロメートルを飛んでいる探査機や人工衛星を考えてみると、これは秒速約7.8キロメートルで地球の周りをくるくる回っています。

 そして、この人工衛星に速度変化を与えると、この軌道が徐々に徐々に膨らんでいきます。例えば、速度を2.2キロメートル毎秒プラスすると、このような楕円の軌道になります。

 さらに3.2キロメートル毎秒にすると、この楕円が閉じず放物線状の軌道に変わっていきます。このとき、次第に地球から離れていって、最終的には地球から非常に遠い所で速度がゼロになります。これは、「第2宇宙速度」と呼ばれています。

 速度をさらに3.2キロメートル毎秒から3.6キロメートル毎秒まで増やすと、今度は同じように閉じない軌道になるのですが、数学的には双曲線という軌道になります。宇宙工学的な特徴としては、双曲線の軌道になると、遠方での無限遠での速度が、ある有限な値を持つようになっていきます。3.6という値だと、遠方での速度が秒速約2.96キロメートルになります。遠方で2.96キロメートル毎秒の速度を持つということは、地球に対して2.9の速度を持つということを意味します。


●火星に届くためには地球に対して2.9キロメートル毎秒の速度が必要


このことについて先に話させていただきますが、地球から2.9キロメートル毎秒で離れるということは、地球が太陽の周りを回っているときの速さよりも、速い速度を持つということです。先ほどまでは地球周りを想定して話してきましたが、今度は太陽周りで考えてみましょう。

 地球と同じ速度で回っていれば、太陽の周りを地球と同じようにほぼ円で回ることになります。それに対して、地球よりも2.9キロメートル毎秒だけ速い速度を持つと、今度は地球軌道よりももう少し広がった楕円軌道になります。実は2.9では、この楕円の一番遠いところが火星の軌道に届くくらいの距離になります。そのため、この地球に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦