●再生可能エネルギーの積極導入で農林水産業の収入を上げる
どのようにして食糧安保を確保していくのか。さまざまな目標のためにどうやって一次産業を強くして、再生可能エネルギーをどのようにしていくのか。このとき、一次産業と再生可能エネルギーを組み合わせることが極めて有力だろうと、私は思っています。
土地当たりの収入ということを考えてみると、それがご理解いただけるのではないかと思います。
例えば林業ですね。林業というのは、山に生えている木を毎年の成長分だけ切っていくのが持続可能な林業になるわけです。もちろん大きくなった木を切ってもいいのですが、そうすると、また30年、40年、50年と、大きくなるまで待たなくてはなりませんから、結局は毎年成長する分を切っていくことになります。そうすると、だいたい1ヘクタールで採れるのは5~10トンぐらいです。1トン当たりの売値は1万円から2万円ですから、1ヘクタール当たり10万円ぐらいが森林、すなわち林業から上がる収入となります。
同じようなことを、例えばお米をつくる農業で考えますと、採れるのはやはり1ヘクタール当たり5トンぐらいです。しかし、お米は1トンで20万円しますから、だいたい100万円が1ヘクタール当たりの田んぼの生産量になってきます。ですから、林業を行うためには非常に広い面積でビジネスを行うことになります。
それと比べて発電ですが、太陽電池では、同じ1ヘクタール当たりで100万キロワットアワーという単位の電気が1年間に取れます。例えば、1キロワットアワー当たり20円ぐらいと考えますと、2000万円の収入になります。
風力では、さらに再生可能エネルギーが集中しているということがあるので、換算の仕方として、どこまでを風力発電の面積と取るかによりますが、おおむねの電力費は太陽光の10倍ぐらいの売上げになります。
●農・林・水産のそれぞれに再生可能エネルギーをプラス
今、日本の森林には利用されていない面がたくさんありますが、これから世界においてバイオマスというものが非常に重要になってくるのは、ほぼ確実です。例えば、ジェット燃料を石油からつくることができなくなると、バイオマスからつくります。それから、今は石油化学でいろいろなプラスチックをつくっていますが、その石油が使えなくなるのが「脱炭素」ということですから、これもおそらくバイオマスからつくることになるのは、ほぼ間違いありません。
(このように)さまざまに林業の需要が高まってきますので、日本にとっても非常に大事な資源になるのです。だから、日本の山を開発するのですが、そのときに100分の1でいい、つまり1パーセントの土地に太陽電池を置く。そうすると、単位当たり100倍の収入が得られますから、同じ1ヘクタールから(の収入)は2倍になる。林業収入はほとんど同じだけれども、太陽電池での発電を加えると、経済性は2倍になる。そうすると、今まで儲からないと思われ、若い人も跡を継がない状況だったのが、魅力ある産業になってくると思うのです。
同じようなことが農地でも起こります。例えば、下にジャガイモやタマネギなどをつくっている畑ですと、そこにソーラーシェアリングという3メートルぐらいの高さの支えをつくり、その上に太陽電池を置きます。(畑地の)30パーセントぐらいまで長方形の太陽電池を置いて、隙間が7割ということになるわけです。30パーセントぐらいの太陽電池を設置しても、(作物に)まったく影響がないことは、いろいろと実験されて分かってきています。
田んぼでも同じです。最初は、お米は無理だろうという人も多かったのですが、いくつかのベンチャーや大企業などがいろいろ実験をしてみて、30パーセントまではまったくお米の生産に影響しない、量も味も変わらないというデータが、あちこちから出てきています。
30パーセントの太陽光が取れて、お米はまったく影響を受けないとすると、太陽光はお米の農地に比べて10倍の収入がありますから、(経済性は)約3倍になる。これにお米を合わせると、4倍の経済性ということになってくる。これはもう実験されています。人によっては2倍ともいいますし、5倍というデータもベンチャー等が出していますので、すでに実験されているのです。
それから、風力に関していうと、漁業と組むべきだろうと思っています。今は漁業権の問題があるので、風力発電を海に置くようなことは進まないとか、そこを突破するのが大変だといわれます。しかし、そんなことはありません。海に何かを置くと、その周りにはほぼ確実に魚礁ができます。実験でもそのような結果が得られています。そして、風力からの電力というのは極めて集中して出てくるので、量が多いのです。ですから、漁業者が風力発電の業者...