●系統樹においても、アイヌ人が縄文人に最も近い
この図を見ると、縄文人から見て一番近いのはアイヌ人、その次はオキナワ人、ヤマト人、そして北部中国人ということが簡単に分かります。これは、主成分分析の結果から推定されるのと同じことです。つまり、同じデータですから、違う手法を使っても同じ結果になるということです。
上の系統樹は、神澤秀明さんの博士論文によるものです。神澤さんは私の研究室で博士号を取り、現在、国立科学博物館の研究員をされています。中には論文になっていないものもありますが、彼は実際にいろいろな解析をしています。そこで、彼の博士論文によるこの図を見ると、現在のアイヌ人と縄文人は集団として近い。また、先ほどからアイヌ人とオキナワ人のことが頻繁に出てきましたが、縄文人は明らかにオキナワ人よりアイヌ人に近く、一方、オキナワ人はヤマト人の方に近い。ということが分かる系統樹になります。
これは、骨から見た系統樹とそっくりです。
上の図は、オキナワ人は入っていないのですが、骨から見た系統樹です。私の名前も入っていますが、これは骨の研究で、東北大学医学部の教授をされていた百々(どど)幸雄先生、現在、琉球大学医学部の教授をしている石田肇先生たちとの共同研究によるものです。骨を調べると、アイヌ人と縄文人は非常に共通性があります。図の上部の長い線で示されていますが、共通性に関してはその上部と下部では大きく違います。また、Jといろいろ書いてありますが、Japaneseのことです。つまり、古墳時代の人、室町時代の人、弥生時代の人、江戸時代の人、現代の日本人、つまり日本列島人(ヤポネシア人)は皆、よく似ているということです。ところが、縄文人とは大きな違いがあります。なぜこんなに違うかというと、二重構造モデルで考えると、東ユーラシア大陸の人たちがたくさん来たということになるからで、骨からの結果と、先ほど挙げたDNAの結果が対応しているのです。
●核DNAによって縄文人が非常に古いことが判明した
ところが、縄文人の核DNAのデータから、今まであまりきちっと言われていなかった新しいことがバシッと出しました。それは...