江戸とローマ~下水道と肥溜め
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
公衆便所の名前になった皇帝ウェスパシアヌスのユーモア
江戸とローマ~下水道と肥溜め(2)江戸とローマの便所事情
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
日本の便所は「かわや」「せっちん」「はばかり」などと呼ばれ、「せっちん」を「雪隠」と書くようにあまり人の行きたがらないような場所に置かれたが、そうした家の構造が普及したのは江戸時代だった。江戸は循環社会とよくいわれるが、例えば長屋で集めた糞尿は農家の手に渡り、大家が対価を受け取ったのだ。一方、古代ローマではウェスパシアヌス帝が公衆便所を設置したことで、今もイタリア語では「ウェスパシアーノ」と呼ばれているという。(全3話中第2話)
インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分25秒
収録日:2021年9月16日
追加日:2023年8月30日
≪全文≫

●便所のことを考えた家の構造が江戸時代に広く普及


本村 (日本の)便所は、「かわや」「せっちん」「はばかり」などと呼ばれていました。このうち「雪隠」と書く「せっちん」は、おおむね家屋の北側、あまり人の行きたがらないような場所に置かれました。家の中にそういうものを設けることが、江戸時代に広く普及したといわれています。

 元禄の頃に書かれた『百姓伝記』という本の中には、便所の位置や構造まで書いてあります。それは、やはり世界史的に非常に早い時期に行われていたのではないかと思います。そういうことに興味を持ち、組織立てて考えるのが、日本の場合の非常に大きな特徴であったわけです。

 そのうちに、(トイレが)外に置かれたり、あえて日当たりのいいところに置かれたりするようなことも行われ始め、家の構造の中にきちんとトイレを位置づけ、つくっていくシステムがだんだんできてきます。

 もちろん先に言ったように、人糞尿というものは農村で収穫する野菜の類と交換される。農民の手に渡ったそれは、農地に施す肥料になるということです。あまり手に入らないような場合、人糞尿の値段が非常に高騰して、儲かるようなこともあったといわれています。だから、長屋の共同便所というのは、大家の収入源として馬鹿にならなかったわけです。

 そういうふうに考えると、ヨーロッパのほうでは、近代になってからでさえ、それほどきちんとしたものはできていなかった。しかし、口に入れて、そこから外に出すというのは人間の一番基本的なことです。なぜ、そんなことがあまり気にならないのかというのは、われわれの感覚でいくと、ちょっと不思議な気がします。

―― これは、不思議ですね。日本人の場合は、口から入れるものと出すものをしっかり考えているとともに、それを肥料として循環させていくということですね。


●江戸の優れた糞尿リサイクル・システム


―― 以前、講義で使ったことのある本で『江戸の卵は1個400円』(丸田勲著、光文社新書)というものがありました。これには、いくらぐらいで(人糞尿が)売られていたかが書いてありました。

本村 ああ、そうですか(笑)。

―― 10世帯程度の長屋の場合、大家には年間2両ぐらいが渡ったといいます。2両というのは、江戸期でもどのあたりで換算するかでもちろん変わってきますが、この本の換算では、今の価値でほぼ25...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳