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江戸の下水道は世界一!? 欧米が驚いた「日本の肥溜め」

江戸とローマ~下水道と肥溜め(1)日本人の清潔感と肥溜め

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
概要・テキスト
驚くほどインフラが整っていた江戸とローマだが、下水道や糞尿処理も例外ではない。ヴェルサイユ宮殿に一つもトイレがなく、広い庭園で用を足したという話は有名だが、19世紀にオスマンがパリ大改造を行うまで、アパルトマンに住む人々は上水も下水も手ずから運ぶ必要があった。一方、幕末維新期に訪れた欧米の人たちが驚いたのは「日本の肥溜め」で、当時江戸の下水道の完備は世界トップクラスだった。(全3話中第1話)
インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:12
収録日:2021/09/16
追加日:2023/08/23
≪全文≫

●日本人はヨーロッパ人より清潔!?


―― 皆様、こんにちは。本日は本村凌二先生に「江戸とローマ」の講義をいただきたいと思っています。本日は「耐えられる腐臭」、下水道、それから糞尿処理のお話ということで、そのお話をいただきたいと思います。下水道という部分での江戸とローマの共通点というのは、どういうところにあったのでしょうか。

本村 世界史全体を見ると、現代はともかく、それ以前の時代において(両者には)非常にいい面があったのではないかというところです。私が最初にヨーロッパへ行ったのは40年以上前になります。当時は日本のほうが不潔だという話を聞いていましたが、外国では意外にそうでもない。もちろん日本より早く水洗便所ができてはいましたが、例えばトイレに行った男性がその後ちゃんと水で洗っているかというと、あまり洗っていない。

―― それは、手を、ということですか。

本村 そうです。そういう場面を何度も見かけました。私は競馬が好きですから、(外国でも)競馬場に出かけます。非常に混んでいるときなど、(トイレにも)人がたくさん殺到する場面に出会いましたが、日本人ほどまめに(手洗いを)やっていないのに気づきました。

 歴史的にさかのぼっても、例えばつい近代になってからのヴェルサイユ宮殿にはトイレが一つもなかったようなことが、ごく当たり前にありました。広い敷地があるから野外で済ませればいいという(のが彼らの考えでした)が、どこで誰がやっているのか分からない状況でした。

 そういうことの処理について、どうも日本人のほうがどちらかというと清潔感があるのではないかという感じです。


●水も下水も自分で運んだパリのアパルトマン


本村 また、ヴェルサイユ宮殿にさえトイレがなかったというだけではない問題が(ヨーロッパには)ありました。本当にきちんとしたトイレがない中、各家は何階もある構造で、今のような下水施設がきちんと整備されていない。つい100年ぐらい前までは、そういうものは整っていなかったのです。だから、アパートやマンションのような建物では、一番下(の家賃)が一番高かった。一番下であればすぐに処理できるけれども、上に行けば行くほど、そういうものを持って降りてこなければいけなかったからです(笑)。

―― 当時のことですから、全部階段で降りなければいけないということですね。

本村 ...
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