江戸とローマ~日本酒とワイン
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樽廻船とアンフォラの山、酒文化を謳歌した江戸とローマ
江戸とローマ~日本酒とワイン(1)醸造技術の進歩と輸送手段の変遷
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
都市人口が増加した平和な時代、飲酒の需要は当然大きいが、その要因の一つにノウハウの洗練がある。日本では醸造技術が進み、濁り酒が清酒に変わり、日常的な嗜好品として愛飲されるようになる。一方、ローマではワインのよしあしと日照時間の関係が知られるようになり、当たり年の酒を貯蔵して飲む風習が生まれてくる。(全4話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分07秒
収録日:2021年7月16日
追加日:2022年8月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●酒の技術と文化が定まった江戸・ローマ


―― こんにちは。

本村 こんにちは。

―― 本日は本村凌二先生に「江戸とローマ」の講義をいただきます。今回のテーマとしては「飲酒の嗜好、ワインと日本酒」というテーマでお話をいただきたいと思います。本村先生、どうぞよろしくお願いいたします。

本村 はい。

―― 飲酒、まさにお酒の話ということですが、江戸とローマで先生がまず注目されるポイントは、どういうところになりますでしょうか。

本村 これは文化の成熟度を基本に置いた上での話ですが、日本酒が現在の形、いわゆる「清酒」になってくるのが、やはり江戸時代ではないかと思います。もちろんずっと以前から「どぶろく」のようなお酒はありますが、醸造の技術がかなり進んできて清酒が出来上がってくるわけです。

 一方、古代ローマのほうでは、ワインは本当に古い文化ですから、それこそ有史になる前の紀元前からあったかもしれません。一般には今、中東あたりから始まったのがだんだんギリシアを経てローマに伝わってきたといわれます。ローマの時代は、ギリシアやエトルリアから受け継いだものをより磨き上げていくわけですが、ローマ時代になってだんだん年代物の価値が分かるようになってきます。

 それまでは、どの年がいい・悪いということはなく、とにかくできたものをワインとして売り出すというようなものでした。それが紀元前100年あたりに、非常に出来のいいワインができます。


●ワインのよしあしは、気候変動をはかるメルクマール


本村 ワインの出来のよしあしを決めるのは、日照時間の長さです。このような日照時間とワインの出来の関係、ある年には非常にいいものができることに、みんなが気づいてくる。また、出来の良かったものを保存していくこともできるようになる。現在のワインに近づいてきたのは、ローマの帝政期ではないかということです。

 江戸時代に日本酒の醸造の技術が進んで洗練されてきたのと同様、古代ローマにおいては現在に近い感じで年代物のワインを味わうようなことができてくる。そのような意味で、非常に比較の対象になるということです。これが今回の話の基本になります。

―― 確かにワインについては、何年物が当たり年だから貯蔵しておいて、ずっとそれを楽しむという楽しみ方もあります。しかし、それがローマからというのは、かなり早い...

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