江戸とローマ~日本酒とワイン
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ポンペイのファストフード店、遺跡が物語るローマの酒文化
江戸とローマ~日本酒とワイン(2)ローマの酒文化とファストフード
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
現在では醸造酒を薄めて飲む習慣はないが、江戸やローマでは今より濃厚な原酒が水割りで飲まれていた。ポンペイからは、ワインとファストフードを商う「テルモポリウム」が出土している。夜間照明のない時代、午後になると貴族も庶民も毎日のように入浴と飲酒を楽しむのが、ローマの風習だった。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分22秒
収録日:2021年7月16日
追加日:2022年8月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●薄めた酒を買っていた江戸の庶民


本村 (江戸とローマの酒文化には)他にもいろいろ比較することがあります。例えば日本酒を飲む場合、今の人が薄めて飲むなどということはほとんどないでしょうが、江戸時代のお酒の飲み方は基本的に原酒を薄めて飲んでいます。清酒の技術ができてきたといっても、今から比べるとやはりかなり濃厚だったりしたのです。

―― 精米度合いなども今の大吟醸などは3割程度まで研ぎ澄ましますが、当時は違ったようです。東京農業大学名誉教授の小泉武夫先生が昔の日本酒を復刻したという話を書かれていますが、今のお酒より糖度(甘さ)もアミノ酸も多く、トロッとして、みりんのような風味があるそうです。

本村 そうらしいですね。だから、それが好きな人にとってはそれでいいでしょう。また、酒を売る段階にしても、当時原酒としてできたものはだいたい20度ぐらいあったわけです。今の日本酒は15度前後でしょうかね。

―― そうですね。15度から16度ぐらいでしょうか。

本村 そうですよね。(当時は)それよりもう少し高いものだったから、売る段階で少しどころか、かなり薄めていたのだそうです。4倍か5倍ぐらい薄めていたから、もう5、6度ぐらいにしかなりません。ところが、税金は製造量に対してかかったそうで、製造量と消費量が違うというのです。圧倒的に消費量のほうが多くて、(原酒としてもともとの)製造量は3分の1か4分の1しかないわけです。

 税金をかけられるほうからすると、できるだけ少ないほうがいいわけですから、実際に売るときには3倍か4倍にも薄めて、5、6度の形で売っていたそうです。例えば、水割りにするといっても、売るときからそういう形だったのではないかということです。


●ワインのお湯割りも冷たいワインもたしなんだローマ人


本村 ワインも実はそうでした。今でこそワインというとボトルに入っていて、われわれはそれを注ぐだけですが、ローマ時代のワインは違います。相当度数も強かったのか、今ほどソフィストケートされていませんから、非常に濃厚なところがありました。ローマ時代は、お店の段階でそれを薄めるのではなく、(飲み手が)個人の好みで薄めるわけです。

 だから、お湯割りもあります。当時の人は、冬になるとお湯割りにして飲んでいます。

 それから、冷たいワインもあったりしました。なぜ冷凍(や冷蔵)の技術がな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典