江戸とローマ~日本酒とワイン
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ワインの神に対するディオニュソス信仰と文明国の境界線
江戸とローマ~日本酒とワイン(4)ディオニュソス信仰と文明
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
人間は理性だけで生きているわけではない。古代ローマでは、ワインの神に対するディオニュソス信仰があり、飲酒がもたらす解放感は、人に自由を担保してくれる。ヨーロッパでは、ワインのできる国が「文明国」、そうでなければ野蛮という線引きも古くにはあった。日本ではむしろ文明がもたらすインフラが日本酒を全国へ流通していった。酒と文明の関係も一筋縄ではいかない。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分37秒
収録日:2021年7月16日
追加日:2022年9月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●ディオニュソス信仰とローマ


―― お酒というと日本では「神事」、いわゆる神様の行事に欠かせないものというところがあります。ローマにおいてもやはりそういう伝統はありますか。例えばディオニュソスなど、いろいろな神様がいるように聞いていますが、どのような扱われ方をしたのでしょうか。

本村 ディオニュソスはワインの神といわれており、ニーチェの『悲劇の誕生』ではアポロンと対比されました。合理性があり、合理的な考え方ができるのが「アポロン的」なものであり、「ディオニュソス的」なもの、あるいは「バッカス的」なものは非合理性だったり、情念を表に出す部分だったりします。

 人間にはこの二つの面があるが、いわゆるギリシャの正統文化はアポロン的なものを強調し過ぎている。本当は人間にはディオニュソス的なもの、つまりお酒に酔っ払って自分の情念を丸出しにするようなところがあるという考えが、ギリシャからローマへずっと続いていきました。

 キリスト教が入ると、そういうものを抑えがちになりますが、古代においてはワインの神に対するディオニュソス信仰があり、少なくともキリスト教の初期の頃までは、各地で彫像がつくられました。要するに人間がリラックスしている状態、その中で自分が精神的な解放感を味わうといえばいいでしょうか。彼らにとってはそういうものがディオニュソスであり、それを具体化したのがワインだということです。

 ローマ時代には、ディオニュソス信仰を取り締まるような法律もだんだんできました。お祭りをして騒ぐのはいいけれども、あまり大騒ぎになると、内乱とまではいかなくても、国家(公権力)側からすれば、秩序を乱す連中だと見られる。そのため、紀元前2世紀の初めぐらいにこれを規制しようとする動きが始まります。

 表向きはバッカス(ディオニュソス)祭礼を行いながらみんなでお酒を飲むのですが、集まりの規模を小さくしろという規制が出るのです。まったく抑圧するということはできませんから、「あまり大々的にするな」という法が残っています。これはたまたま残っていたのですが、こういう規制が繰り返し行われていたのではないかと思います。


●ワインの有無が「文明」を分ける


本村 日本でも、江戸のいろいろな改革が行われた時に、お酒についての制限が段階的に出来上がり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
藤田達生
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
これから必要な人材と人材教育とは?(1)人手の供給不足とマクロ経済への影響
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(7)日本の倫理こそ未来の理想
他人の幸福実現に喜びを見出す日本の道徳こそ未来の理想だ
賴住光子
新撰組と幕末日本の「真実」(1)近藤勇…教養人の素顔と日野宿本陣
近藤勇と日野宿本陣…多摩の豪農たちの財力と教養力の凄さ
堀口茉純
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照