江戸とローマ~花見と剣闘士
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
剣闘士の死亡率は低かった?…真剣勝負と興行の真実
江戸とローマ~花見と剣闘士(4)剣闘士の実際
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
映画『ベン・ハー』では戦車競走シーンが活写されたが、『グラディエーター』で描かれた剣闘士の闘いぶりは脚色が過ぎるという。剣闘士の試合に関して、命に関わる闘いではあるが実際に1日の興行で亡くなる剣闘士は1人だったという研究もある。もともとその由来は、戦死した兵士の慰霊のための儀式だったのだ。(全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分43秒
収録日:2021年5月24日
追加日:2021年12月6日
≪全文≫

●真剣な闘いを見たい観衆、剣闘士を保全したい主催者


―― ローマの庶民文化では、比較的動的で競技系のものが好まれたようです。一方の江戸は、例えば吉宗が隅田川の畔に桜を植えたりしています。

本村 「千本桜」ですね。

―― ええ。中野に桃の名所をつくったりと、そういうことが比較的多くございます。先生は江戸と庶民文化をどのようにご覧になっていますか。

本村 ローマはどちらかというと剣闘士などが代表的で、流血のものを目撃して楽しみました。それに比べれば日本の花見や歌舞伎などはずいぶん穏やかな見世物だったのではないかと思いますね。

―― 闘う系でいうと、日本では相撲ぐらいでしょうか。

本村 そうですね。闘うといっても刃物を出してやるわけではないですし。

―― はい。剣闘士は映画の通り、もう実際に命のやりとりをするということになるわけですか。

本村 いや、それは映画ほど派手ではないですよ。あれ(『グラディエーター』)はリドリー・スコット(監督)が宣伝風にやっていたようなところもある。『スパルタカス』という1960年ぐらいにカーク・ダグラスが主演・総指揮した映画のほうが、むしろ剣闘士の実態に近いのではないかと思います。

―― それはどういうものになりますか。

本村 もう少しみんな慎重に闘っていますね。『グラディエーター』では派手に斬り合ったりして…。

―― ワッと斬り合って、次々殺していくみたいな。

 あれは主催者にとってまずいのです。主催者サイドには、剣闘士を雇っている組合があります。そういう組合の親方にとって剣闘士は財産なわけです。だからそんなに殺したくないのです。

―― そうでしょうね。

本村 例えば、あるところから5人ずつ出てきて、5つぐらいの試合がある。多くても10組ぐらいではないかと思います。そういう中で、闘いによって片方が死に片方が生きるような試合というのはおそらく1日1つぐらいではなかったかと言われています。

―― なるほど。

本村 興行主からすれば、自分たちの資本をなるべく失いたくない。一方、民衆としては、そういうものを見たい。ただ流血を見たいというより、やはり真剣な闘いを見たい。相撲にたとえれば、「勝負には負けたけれども相撲では勝った」とか、「いい相撲でしたね」といわれる勝負があります。やはり、観衆は「いい相撲」を見たいわけです。

 つまり、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子