フラウィウス朝時代~ローマ史講座Ⅶ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
コロッセオ建設が意味するローマ帝国の安定
フラウィウス朝時代~ローマ史講座Ⅶ(2)倹約家の皇帝とコロッセオ
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏による「フラウィウス朝時代」のローマ皇帝物語。ローマ正統の生え抜きの血筋ではないものの、時代のはまり役として登場した皇帝ウェスパシアヌス。かなりの倹約家の皇帝であったが、その中で行った唯一のぜいたくがコロッセオ建設だ。実はここに古代ローマの安定が見て取れる、と本村氏は言う。(全5話中第2話)
時間:11分44秒
収録日:2017年11月17日
追加日:2018年3月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●実直、倹約家、そしてユーモアもあったウェスパシアヌス


 ウェスパシアヌスは金銭には非常に細かいところがあって、俗にいえばけちくさいところがあったと言われています。しかし、それ以外では、特に非難される欠点もありませんでした。また、非常にどっしりとして頑強で、少し武骨な顔、俗な言い方をすればイケメンではない、そういう顔をしていました。

 しかし、彼にはユーモアもありました。彼に対して非常に思いを寄せた女性がいました。ウェスパシアヌスも悪い気はしませんから、彼女を愛人のように扱っていたわけです。それで、いろいろな贈り物をするのですが、その出費を自分の財布ではなく国庫から出してくれ、と言うのです。国庫の会計係が「いくら皇帝様であられましても、愛人はご自分の問題ですから、ご自分の財布からお出しになったらいかがですか」と言った時、ウェスパシアヌスは「自分のような醜男に情けをかけてくれたというのは、国家的貢献だ」といったユーモアで返し、国庫から出すように伝えたそうです。彼はそうしたしゃれっ気のある人だったのです。

 彼は亡くなる時までそうした冗談の精神を持っていたらしく、何かとそのような逸話が残っています。例えば、皇帝は亡くなると神格化されるわけですが、「私もいよいよ神になりそうだな」というようなことを話したともいわれています。


●正統性を自らの生き方で示す


 ネロ帝の時代には処刑があったり財産没収があったりしたのですが、その後の内乱による混迷で、古来の名だたる貴族の血筋がほとんど途絶えてしまいました。そのために、ウェスパシアヌスは、新しい所から人材を集めてくることに対しても非常に配慮をしたので、彼の周りには有能な人材が集まりました。

 一方、彼は非常に温厚ではありましたが、自分の意思を貫くということに対しては妥協を許さず、確固たる姿勢で臨みました。ユリウス・クラウディウス朝の血筋が、ネロが亡くなったことで途絶えたわけですが、新しい為政者も結局、正統性が問われるわけです。彼はそのことに対し、自分の生き方そのもので示すことによって、多くの人々の敬意を集めたのです。


●しまり屋の皇帝の唯一のぜいたくがコロッセオ建設


 それから、今、ウェスパシアヌスは非常にしまり屋でけちだったと言いましたけれども、たった一つだけ、ものすごいぜいたくをしたことがあります。コ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子