フラウィウス朝時代~ローマ史講座Ⅶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
皇帝ティトゥスが残忍から善人に変貌した理由
フラウィウス朝時代~ローマ史講座Ⅶ(3)皇帝ティトゥスの変貌
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
早稲田大学国際教養学部特任教授の本村凌二氏による「フラウィウス朝時代」のローマ皇帝物語。今回取り上げるのは、ウェスパシアヌスの死後、跡を継いだ長男ティトゥス。彼は皇帝になるや人が変わったような善人ぶりを見せて周囲を驚かせた。残忍で無慈悲な面のあった彼が変貌したのは一体なぜか?(全5話中第3話)
時間:10分22秒
収録日:2017年11月17日
追加日:2018年3月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●跡を継いだティトゥスの驚くべき変貌


 父ウェスパシアヌスを継いだのが、長男のティトゥスでした。ティトゥスという人は、少し不思議なところがあるのです。

 父の下で働いている時は、ある面では非常に民衆に嫌われていました。彼は軍人としては非常に有能だったのですが、無慈悲で残酷なところがあって、時には非合法的な手段に出ることもありました。そのように民衆や周囲の人たちは見ていましたから、彼が跡を継いだ時、周囲はおそらくギクッとしたのではないかと思います。

 ところが、彼は皇帝になったら急に善人になってしまったのです。いわば、非常に好感の持てる皇帝になったということです。ローマの皇帝の周り、あるいは宮廷の中では、密告とか陰謀というものがある程度渦巻いているわけですが、そうした密告自体を積極的に禁止しました。また、帝になった時、ちょうどコロッセオが完成しますから、その完成記念のために100日間ぶっ続けで剣闘士の戦いを中心とする見世物興行を行いました。古代という時代は、もちろん前近代的時代全体がそうですが、テレビもラジオも何もないわけですから、見世物興行は大変な娯楽として歓迎され、それを観た民衆は大いに歓喜しました。

 それから同時期のもう一つの大きな出来事として、79年のヴェスヴィオ山の噴火によって、ポンペイやヘルクラネウムといった都市が埋没してしまったことが挙げられます。それに対して、ティトゥスは非常に迅速に行動をして、いわば危機を克服します。彼はそうした素晴らしい有能ぶりも見せるのです。皇帝自ら被災地を訪れるということもちゃんとやりました。どこかの政治家の中には3.11の後、被災地を一切訪れなかったと批判された人もいますけれども、ティトゥスは実に迅速に対応しているのです。まさに仮面をかぶったかのように高潔な慈愛の人物に変身してしまったということです。


●父の時代にはあえて汚れ役を買っていたという説


 もっとも、別の見方もあります。ティトゥスは変身したのではなく、もともと善良な人間だったけれども、父親が皇帝の間いわば汚れ役になっていたのではないかということです。皇帝は全てにおいて善い顔をするということでは務まりません。結局どこかに皇帝に対して好意を抱かない人たちがいるため、そういう人たちをどうやって黙らせるかということで、ティトゥスが皇帝の父を表に立てて裏面でそ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(1)危機の台湾への密航
「国共内戦」危機の台湾…根本博の密航と涙で迎えた中国人将軍
門田隆将
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ