フラウィウス朝時代~ローマ史講座Ⅶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
カリグラ、ネロ、ドミティアヌス…悪帝と「記憶の断罪」
フラウィウス朝時代~ローマ史講座Ⅶ(4)ドミティアヌスの恐怖<下>
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ドミティアヌスの治世は81年から96年にかけての15年間。その間に競技場建設をはじめ多数のインフラ整備が行われた。首都ローマばかりでなく属州への目配りも大切にした皇帝は、兵士たちも優遇する。そんな彼がなぜ「記憶の断罪」に遭わねばならなかったのか。東京大学名誉教授・本村凌二氏に、ドミティアヌスの時代をご案内いただこう。(全5話中第5話)
時間:13分38秒
収録日:2017年11月17日
追加日:2018年4月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●相次ぐ陰謀の密告と皇帝の恫喝


 神経質なドミティアヌスのもとへ、実際にあったかどうかは別として、何度も陰謀事件や陰謀らしきものが密告されてきます。そのたびに彼は取り調べを行い、処刑することもあったでしょう。そうしたことを繰り返す中で膨らんでいった彼の猜疑心や神経過敏さを示す有名なセリフが残っています。

「皇帝というものは哀れなものだ。陰謀計画があっても、それが本当に陰謀計画であったかどうかは、自分が殺されない限り証明されない」

 「証明される」前の段階で処理しなければならないわけですから、グレーな人たちは全て処刑するなどの手段を取る場合もあったでしょう。そのため、彼の残酷さが表に出るようになります。例えば、元老院貴族たちを全員宮廷に集めて照明を消し、薄明かりしかない暗闇の中でゲラゲラ笑い出すシーンが伝えられています。

 「おかしくてしようがないよ」と彼は言います。「自分の合図一つで、お前らの首は飛ぶんだから。そう考えるとおかしくてしようがない」

 元老院貴族たちに対して、こうした脅しや威嚇のような言葉を平気で放つものだから、ますます周りの貴族からの反感は募ります。中には、自分がいつ殺されるか分からないのであれば、逆に皇帝を殺した方がいいと考える者も出てきます。それほどに、ドミティアヌスは元老院貴族たちにとっては非常に警戒され、恐れられる人物になっていきました。


●逼迫した財政のため有力者の処刑、そして暗殺へ


 財政問題、とりわけ軍事費による逼迫については、もう一つ事情があります。兄のティトゥスが若い頃、対ユダヤ戦争でリーダーとして活躍していたのに対し、ドミティアヌスには軍人としての功績がありませんでした。なんとか自分も功績を立てたかった彼は、ドナウ方面に軍隊を派遣します。大した勝利ではないものの、それなりの成果は確かに収めます。当然ながら、それには軍事費もかかることになりました。

 また一方、民衆の機嫌も取らなければいけません。彼はローマ市中に新しい競技場を造り、そこでおそらく戦車競走を行ったと考えられています。現在のローマへ行くと、楕円形のナヴォーナ広場があります。大規模な「チルコ・マッシモ」に比べれば小さいですが、そこが戦車競走に使われたらしいのです。かつては「ドミティアヌスの競技場」と呼ばれた場所が、現在はナヴォーナ広場と称されて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(1)なぜ満洲が重要だったのか
放っておけば朝鮮はロシア領になりかねなかった
渡部昇一
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋 (1)日本橋に見る徳川家康の手腕
徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは
堀口茉純
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…陣頭指揮とカリスマ性
片山杜秀
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子

人気の講義ランキングTOP10
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨
「満洲」から考える日本とアジア(10)戦後の「五族」の運命
「五族協和」の真実と満洲国崩壊後の五族の悲劇…満洲人、朝鮮人、露人、蒙古人、漢人らの戦後悲史を直視せよ
宮脇淳子
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(5)サルコペニア・フレイル対策
認知症予防にはどんな食事がいいのか?鍵はビタミンDの充足
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる
トップアスリートが実践する「自分の高め方」とは…まず集中のスイッチを入れる方法は?
為末大
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
林望
「万葉集」の聖徳太子――語りかける人(1)日本人の憧れ
聖徳太子と日本人…「実在しなかった」説の真相とは?
上野誠
日本画を知る~その技法と見方(1)写実・写意・写生
日本画で大切な「写意」「写生」の深い意味とは?
川嶋渉